解説
『ガリバー旅行記』(KADOKAWA/角川書店)
マザーグースの昔から、アイリッシュ・ジョークは断腸の笑いとでもいうべき、残酷さとナンセンスを撒き散らして来た。ジョナサン・スウィフトの名前も、アイリッシュ・ジョークの底無しの恐ろしさとともに記憶されるべきである。妊娠中絶を禁じられているアイルランド人の子どもを食糧にすれば、食糧問題と人口問題は一気に解決する、と真顔で論じたスウィフトは、裁判官としても出世した。
ガリヴァーは巨人国、小人国、不死の国、果ては日本にまで旅をしているが、多くの読者はこれをファンタジーの元祖のように見なしてきた。子どもはスウィフトが仕掛けた風刺の爆弾には触れずに、ハリー・ポッターと同じように読んでしまうだろうが、読み方によってはこの旅行記は空想の産物などではなく、現実の寓意的表現と取れる。旅人はいつだって、自分の常識が通じない異国の風物、風習をグロテスクに捉える。大航海時代の記録は皆自分の目で見てきた事柄を記しているが、どうして内容は『ガリヴァー旅行記』に似ている?
【この解説が収録されている書籍】
ガリヴァーは巨人国、小人国、不死の国、果ては日本にまで旅をしているが、多くの読者はこれをファンタジーの元祖のように見なしてきた。子どもはスウィフトが仕掛けた風刺の爆弾には触れずに、ハリー・ポッターと同じように読んでしまうだろうが、読み方によってはこの旅行記は空想の産物などではなく、現実の寓意的表現と取れる。旅人はいつだって、自分の常識が通じない異国の風物、風習をグロテスクに捉える。大航海時代の記録は皆自分の目で見てきた事柄を記しているが、どうして内容は『ガリヴァー旅行記』に似ている?
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