書評

『三つの小さな王国』(白水社)

  • 2018/04/27
三つの小さな王国 / スティーヴン・ミルハウザー
三つの小さな王国
  • 著者:スティーヴン・ミルハウザー
  • 翻訳:柴田 元幸
  • 出版社:白水社
  • 装丁:新書(288ページ)
  • 発売日:2001-07-00
  • ISBN-10:4560071373
  • ISBN-13:978-4560071373
内容紹介:
細部に異常なこだわりを見せる漫画家、中世の城に展開する王と王妃の悲劇的な確執、20世紀初頭のアメリカの呪われた画家の運命。俗世を離れてさまよう魂の美しくも戦慄的な高揚を描く珠玉の中篇小説集。

三つの小さな王国

中篇というと、たいていは長すぎる短篇というか、短すぎる長篇というか、まさに帯に短しタスキに長しという印象があるが、このジャンルにぴったりの才能をコツコツ生かし続けているのがスティーヴン・ミルハウザーである。

緻密な想像力を駆使し、からくり人形、ゲームの世界などを細部まで描きつくした秀作中篇を書いてきた人だが、新作『小さな王国』(Little Kingdoms)は中篇ばかりを三本収めている(ALL REVIEWS事務局注:本書評執筆時期は1994年1月)。

「J・フランクリン・ペインの小さな王国」はアニメーション映画の初期に、分業・大量生産の流れに抗して手描きの動画に固執する男の物語、モデルは明らかに『眠りの国のニモ』の作者ウィンザー・マッケイと、映画の前身テアトル・オプティックの発明者エミール・レイノーの二人だが、その職人芸的なひたむきさは、だれよりもまず作者自身と重なる。

「王妃、小人、土牢」は嫉妬に狂った君主、狡猪な小人、夫の嫉妬の犠牲となる王妃、と『オセロー』を踏まえた設定にはじまり、嫉妬が生む妄想、作家がつむぎ出す幻想とが、どんどんふくらんでいく。

日本でもすでにアンソロジー『幻想展覧会1』(バトリック・マグラア、ブラッドフォード・モロー編)に収録された「展覧会のカタログ」は風変わりな画家の作品解説というかたちをとって、二組の兄妹をめぐる数奇な四角関係を描き出す。三作とも甲乙つけがたい、ミルハウザー愛好者にはたまらない一冊である。

【この書評が収録されている書籍】
舶来文学 柴田商店―国産品もあります / 柴田 元幸
舶来文学 柴田商店―国産品もあります
  • 著者:柴田 元幸
  • 出版社:新書館
  • 装丁:単行本(269ページ)
  • 発売日:1997-12-05
  • ISBN-10:4403210619
  • ISBN-13:978-4403210617
内容紹介:
「僕にとって良いと思える国産品や舶来品を……あちこちから仕入れてきて雑貨店ふうにならべてみた」書評の店・柴田商店。エリクソン、オースター、タブッキからいしいひさいち、『天才バカボン』まで豊富にとりそろえてございます。ぜひ一度お立ち寄りのほどを。絵師・きたむらさとしのあたたかいイラストもますます冴える。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

三つの小さな王国 / スティーヴン・ミルハウザー
三つの小さな王国
  • 著者:スティーヴン・ミルハウザー
  • 翻訳:柴田 元幸
  • 出版社:白水社
  • 装丁:新書(288ページ)
  • 発売日:2001-07-00
  • ISBN-10:4560071373
  • ISBN-13:978-4560071373
内容紹介:
細部に異常なこだわりを見せる漫画家、中世の城に展開する王と王妃の悲劇的な確執、20世紀初頭のアメリカの呪われた画家の運命。俗世を離れてさまよう魂の美しくも戦慄的な高揚を描く珠玉の中篇小説集。

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毎日新聞 1994年1月

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