書評

『ゆうれいホテル』(大日本絵画)

  • 2018/04/28
ゆうれいホテル / アンティジェ フォン・ステム
ゆうれいホテル
  • 著者:アンティジェ フォン・ステム
  • 出版社:大日本絵画
  • 装丁:大型本(1ページ)
  • 発売日:1997-01-01
  • ISBN:4499303923
内容紹介:
ゆうれいホテルへようこそ! 怪物やおばけたちがうじゃうじゃあらわれて、あなたを歓迎してくれますよ。 がいこつのレストランで食事をしたり、魔物があつまるパーティーに参加してみませんか?

"おねえさん"の本選び

いま、息子が一番ひいきにしている本、それは『ゆうれいホテル』だ。毒々しい色合いの表紙に、ドラキュラがニッと笑っている。「きけんですよ ゆうれいしかけえほん」とあるように、さまざまな仕掛けのある飛びだす絵本だ。

私の若いいとこが、息子にプレゼントしてくれた。もし自分が本屋さんで見かけても、決して手にとらないタイプの本だなあと思う。ゆうれいホテルのメニューは、「ちのりジャムのトースト・しんせんなゴキブリのたたきをそえたのうみそ・しらみいりのうじむしアイスクリーム」などなどだし、ページをめくるごとに飛びだしてくるのは、ガイコツや幽霊やフランケンシュタイン……。

いとこの“おねえさん”のセンスに、やや引き気味だった私が、おっかなびっくり読むのが、かえっておもしろかったのだろうか。息子は来る日も来る日も、「ゆうれいホテル」三昧(ざんまい)である。

「ばあばにも読んでもらったら?」と、おばあちゃんにバトンを渡すと、私の母がまた、「うわあ気持ち悪いねえ」「おお恐い!」「おやおや、ここに蜘蛛がいる。アリもいる」と大騒ぎしながらページをめくるので、いっそう盛り上がる。

そのうち息子は、ロフト(マンションについている屋根裏部屋のようなところで、はしごを使って昇ります)にこの本を置き、「ねえねえ、あそこ、ゆうれいホテルなんだけど、いってみない?」という、ごっこ遊びをするようになった。

「えっ、ゆうれいホテル?どんなメニューがあるの?」

「あのね、しんせんなゴキブリのたたきをそえたのうみそとかね、あるの」

「うわ~そんなの食べたくないなあ」

「でもいこうよ、ひとりじゃこわいから、ついてきて」

「よし、じゃあ、行ってみるか」

「うん!」

だいたいこんな流れで、そろりそうりと本に近づき、一ページ目の「これはようこそいらっしゃいました。はやくこないかとそればっかり……」というくだりから、ひととおり楽しむ。薄暗いところでめくる『ゆうれいホテル』は、なかなかの迫力だ。

本を読むというより、本で遊ぶという感じだが、しかけ絵本というのは、こういう遊びにぴったりだ。

くわえて反省したのは、自分の本の選び方。心やさしい主人公が出てきたり、ちょっと教訓的だったり……親の目で選ぶと、どうしても教育的な配慮の働いた選択になってしまう。もちろん、そういう本もいいのだけれど、いっぽうで『ゆうれいホテル』のような本も、子どもの世界を広げてくれることを知った。

いろんな大人が、いろんなセンスで、子どもに本をプレゼントするのって、案外大事なことかもしれない。

【この書評が収録されている書籍】
かーかん、はあい 子どもと本と私  / 俵万智
かーかん、はあい 子どもと本と私
  • 著者:俵万智
  • 出版社:朝日新聞出版
  • 装丁:文庫(224ページ)
  • 発売日:2012-05-08
  • ISBN:4022646667

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

ゆうれいホテル / アンティジェ フォン・ステム
ゆうれいホテル
  • 著者:アンティジェ フォン・ステム
  • 出版社:大日本絵画
  • 装丁:大型本(1ページ)
  • 発売日:1997-01-01
  • ISBN:4499303923
内容紹介:
ゆうれいホテルへようこそ! 怪物やおばけたちがうじゃうじゃあらわれて、あなたを歓迎してくれますよ。 がいこつのレストランで食事をしたり、魔物があつまるパーティーに参加してみませんか?

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2007年1月24日

朝日新聞デジタルは朝日新聞のニュースサイトです。政治、経済、社会、国際、スポーツ、カルチャー、サイエンスなどの速報ニュースに加え、教育、医療、環境、ファッション、車などの話題や写真も。2012年にアサヒ・コムからブランド名を変更しました。

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