書評

『若者と仕事―「学校経由の就職」を超えて』(東京大学出版会)

  • 2020/05/26
若者と仕事―「学校経由の就職」を超えて / 本田 由紀
若者と仕事―「学校経由の就職」を超えて
  • 著者:本田 由紀
  • 出版社:東京大学出版会
  • 装丁:単行本(224ページ)
  • 発売日:2005-04-01
  • ISBN-10:4130513117
  • ISBN-13:978-4130513111
内容紹介:
フリーター、ニートの急増に見られるように、日本の〈若者と仕事〉の現状はきわめて厳しい局面にある。著者は、こうした現状の背景にある日本独特の要因として「学校経由の就職」の機能不全と… もっと読む
フリーター、ニートの急増に見られるように、日本の〈若者と仕事〉の現状はきわめて厳しい局面にある。著者は、こうした現状の背景にある日本独特の要因として「学校経由の就職」の機能不全と「教育の職業的意義」の不在を指摘し、具体的な打開策を提案する。

序章 "教育から仕事への移行"をめぐる閉塞の打開に向けて
1章 「学校経由の就職」の盛衰
2章 「学校経由の就職」の定着に伴うコンフリクト
3章 1990年代における高卒就職の変容-「実績関係」の実態と変化
4章 「フリーター」を生み出すもの
5章 失われた「教育の意義」
6章 若者に力を与えるために-若年雇用政策の問題点と新たな提案

フリーターという「下等」遊民

「フリーター」という用語が登場したのは1980年代後半。好況時であっただけに、自由で新しいライフスタイルとして肯定的なまなざしが多かった。大衆高等遊民の誕生かもしれないとさえおもわれた。ところがバブル崩壊とともに、フリーターをめぐって大衆高等遊民どころか「下等」遊民めいた悲惨さがつたえられるようになる。いまやニートとともに国家や社会を危うくする存在として社会問題にまでなっている。そんなフリーターは400万人、長期化と高齢化がすすんでいる(ALL REVIEWS事務局注:本書評執筆時期は2005年)。

本書はフリーターを含めた若者の就職問題を、近頃の若者は移り気式の若者還元論ではなく、学校から職場への移行問題として解明している。焦点があてられているのは、国際的にも特異な「学校経由の就職」という制度。企業は職安をつうじて学校に求人をおこなう。学校は生徒を選抜し企業に推薦する。企業は学校の推薦を極力尊重して採用する。このような日本型学校経由就職は、若年失業率を減らし、しかも効率的と自画自賛されてきた。

しかし、90年代以降のサービス経済化や不況などによる非正規労働力需要の増大は、日本型学校経由就職の基盤を掘り崩してしまった。こうした形で就職する生徒はとみに減少している。同時に学校経由就職が覆い隠していた短所が一挙に露呈した。よい成績やまじめな生活態度であれば、それに応じて学校が優良企業を紹介してくれたから、将来の職業を視野に入れた教育や学びを損なわせてしまった。その意味で、フリーターは日本型学校経由就職がもっていた問題性、つまり教育の職業的意義の空洞化による最初の不運な犠牲者である。だからこそ、フリーター問題は、構造問題として社会が対処しなければならないという指摘は鋭く、重い。表紙カバーには憂いをおびた寂しい若者が描かれている。著者の若者と教育への熱い思いと重なって胸にせまる。

【この書評が収録されている書籍】
学問の下流化 / 竹内 洋
学問の下流化
  • 著者:竹内 洋
  • 出版社:中央公論新社
  • 装丁:単行本(302ページ)
  • 発売日:2008-10-01
  • ISBN-10:4120039838
  • ISBN-13:978-4120039836
内容紹介:
うけ狙いのポピュリズム化とオタク化の進む学界。紋切り型の右翼・左翼から抜け出せない論壇。書店にあふれるお手軽な「下流」新書…書き手として、読み手として考える「教養主義の没落」後の教養。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

若者と仕事―「学校経由の就職」を超えて / 本田 由紀
若者と仕事―「学校経由の就職」を超えて
  • 著者:本田 由紀
  • 出版社:東京大学出版会
  • 装丁:単行本(224ページ)
  • 発売日:2005-04-01
  • ISBN-10:4130513117
  • ISBN-13:978-4130513111
内容紹介:
フリーター、ニートの急増に見られるように、日本の〈若者と仕事〉の現状はきわめて厳しい局面にある。著者は、こうした現状の背景にある日本独特の要因として「学校経由の就職」の機能不全と… もっと読む
フリーター、ニートの急増に見られるように、日本の〈若者と仕事〉の現状はきわめて厳しい局面にある。著者は、こうした現状の背景にある日本独特の要因として「学校経由の就職」の機能不全と「教育の職業的意義」の不在を指摘し、具体的な打開策を提案する。

序章 "教育から仕事への移行"をめぐる閉塞の打開に向けて
1章 「学校経由の就職」の盛衰
2章 「学校経由の就職」の定着に伴うコンフリクト
3章 1990年代における高卒就職の変容-「実績関係」の実態と変化
4章 「フリーター」を生み出すもの
5章 失われた「教育の意義」
6章 若者に力を与えるために-若年雇用政策の問題点と新たな提案

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初出メディア

読売新聞

読売新聞 2005年6月5日

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