書評

『道程:オリヴァー・サックス自伝』(早川書房)

  • 2018/07/06
道程:オリヴァー・サックス自伝 / オリヴァー・ サックス
道程:オリヴァー・サックス自伝
  • 著者:オリヴァー・ サックス
  • 翻訳:大田 直子
  • 出版社:早川書房
  • 装丁:単行本(469ページ)
  • 発売日:2015-12-18
  • ISBN-10:415209589X
  • ISBN-13:978-4152095893
内容紹介:
「幼いころ、閉じ込められている気がして、動きたい、力がほしいと願った。その願いは空を飛ぶ夢で一瞬かなえられ、乗馬をしたときにも実現した。しかし何より好きだったのはバイクだ」モータ… もっと読む
「幼いころ、閉じ込められている気がして、動きたい、力がほしいと願った。その願いは空を飛ぶ夢で一瞬かなえられ、乗馬をしたときにも実現した。しかし何より好きだったのはバイクだ」モーターサイクルのツーリングに熱中した学生/インターン時代に始まり、世界的なベストセラー医学エッセイの著者になったいきさつ、そしてガン宣告を受けた晩年まで、かたちを変えながらも「走り続け」た波瀾の生涯を赤裸々に綴る、脳神経科医サックス生前最後の著作となった初めての本格的自叙伝。

徹底した自己批評、これぞ偉人

『レナードの朝』『妻を帽子とまちがえた男』などの著作で知られる著者は豊富な臨床経験と繊細な観察眼を持つ優れた生理、神経学者だったが、同時に自己顕示欲の強い野心的表現者でもあった。晩年の仕事として自伝を書くにあたり、感情に溺れやすい性向を含め、冷徹に自身の臨床報告を行っている。戦後から六十年代にかけての、英国、アメリカの青春群像を背景に、スピード狂のバイク乗り、スーパーヘビー級のウエイトリフターにして、同性愛者である自分を包み隠さず披瀝(ひれき)していて、微笑を誘われる。自伝、回想録というジャンルは武勇伝の度合いが高い方が面白い。その一方で、世の少なからぬ「偉人」は役職や利権にしがみつき、「メンツ」を気にするあまり、不祥事や失敗を隠蔽(いんぺい)し、堕落してゆく。誰も読まない栄光の自分史に陶酔する類は所詮(しょせん)「小物」に過ぎず、おのが愚行や妄想を赤裸々に告白し、自己批評を徹底する者こそが「偉人」にふさわしいのである。
道程:オリヴァー・サックス自伝 / オリヴァー・ サックス
道程:オリヴァー・サックス自伝
  • 著者:オリヴァー・ サックス
  • 翻訳:大田 直子
  • 出版社:早川書房
  • 装丁:単行本(469ページ)
  • 発売日:2015-12-18
  • ISBN-10:415209589X
  • ISBN-13:978-4152095893
内容紹介:
「幼いころ、閉じ込められている気がして、動きたい、力がほしいと願った。その願いは空を飛ぶ夢で一瞬かなえられ、乗馬をしたときにも実現した。しかし何より好きだったのはバイクだ」モータ… もっと読む
「幼いころ、閉じ込められている気がして、動きたい、力がほしいと願った。その願いは空を飛ぶ夢で一瞬かなえられ、乗馬をしたときにも実現した。しかし何より好きだったのはバイクだ」モーターサイクルのツーリングに熱中した学生/インターン時代に始まり、世界的なベストセラー医学エッセイの著者になったいきさつ、そしてガン宣告を受けた晩年まで、かたちを変えながらも「走り続け」た波瀾の生涯を赤裸々に綴る、脳神経科医サックス生前最後の著作となった初めての本格的自叙伝。

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2016年2月21日

朝日新聞デジタルは朝日新聞のニュースサイトです。政治、経済、社会、国際、スポーツ、カルチャー、サイエンスなどの速報ニュースに加え、教育、医療、環境、ファッション、車などの話題や写真も。2012年にアサヒ・コムからブランド名を変更しました。

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