書評

『幻をなぐる』(集英社)

  • 2018/08/14
幻をなぐる / 瀬戸 良枝
幻をなぐる
  • 著者:瀬戸 良枝
  • 出版社:集英社
  • 装丁:単行本(145ページ)
  • 発売日:2007-01-06
  • ISBN:408774843X
内容紹介:
“マッスル"な失恋克服記の登場!!理想の男と奇跡的にセックスしたものの、手ひどく裏切られた中川。相手を忘れるために体を鍛え、自慰に励むが妄執は増すばかり。生々しくもピュアな“現代の失恋の生態"が女性たちの共感を誘う。第30回すばる文学賞受賞作。
宇宙の始まりはこんなことだったと人間が考えたことが実際に観測してみたらその通りだったとか、人工的に山羊を拵(こしら)えたなんてな話を聞くにつけ、人間というのは偉いものだ、と思うが、その一方で、犯罪を犯さないまでも、賭博(とばく)にのめり込んで一生を台無しにしたなどと聞くと、人間というのはなんたら阿呆(あほう)なものかと思うのであって、いったいどっちが本当なのかと思うが、どちらも本当なのだろう。

この小説は、そうした人間の、自戒していても後で思い出して、わあっ、と叫びたくなるような愚行を演じてしまう、みたいな愚かさを直視したうえで、苦行のような無駄な努力によって、これを乗り越えようとする人物の話で、その姿は荒野で苦しむ修行者のようで、それを書けばどうしたってこうなってしまい、苦しいので通常は書かない、みたいなところを描いていて、その点についてよい小説であると思った。
幻をなぐる / 瀬戸 良枝
幻をなぐる
  • 著者:瀬戸 良枝
  • 出版社:集英社
  • 装丁:単行本(145ページ)
  • 発売日:2007-01-06
  • ISBN:408774843X
内容紹介:
“マッスル"な失恋克服記の登場!!理想の男と奇跡的にセックスしたものの、手ひどく裏切られた中川。相手を忘れるために体を鍛え、自慰に励むが妄執は増すばかり。生々しくもピュアな“現代の失恋の生態"が女性たちの共感を誘う。第30回すばる文学賞受賞作。

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初出メディア

読売新聞

読売新聞 2007年2月4日

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