書評
『ジョン・コルトレーン『至上の愛』の真実』(音楽之友社)
ジャズの名盤の中でも、コルトレーンの『至上の愛』は、最高位の敬意を表されてきた。ところがこのアルバムには謎がある。彼の「黄金のカルテット」は結成期間である3年の間、「マイ・フェイバリット・シングス」をほぼ毎日のように演奏し、無数のライブ盤が流通しているのに、この組曲はほとんど公開演奏されていないのだ。
本書は膨大な資料と新たな証言を巧みに構成することで、この偉大なサックス奏者がR&Bのテナー吹きからマイルス楽団を経て巨人へと成長する過程を追い、ビートを放擲(ほうてき)した晩年までを感動的に描いている。他の曲が錯綜(さくそう)した音楽技術を追求するのに対し、『至上の愛』は彼の幼児からの宗教体験に回帰した点で隔絶しているのだ、という謎解きには納得した。
晩年には練習風景を観客が安く覗(のぞ)けるロフトを探していたとか、オリジナル・テープは廃棄されたといった逸話も満載。
本書は膨大な資料と新たな証言を巧みに構成することで、この偉大なサックス奏者がR&Bのテナー吹きからマイルス楽団を経て巨人へと成長する過程を追い、ビートを放擲(ほうてき)した晩年までを感動的に描いている。他の曲が錯綜(さくそう)した音楽技術を追求するのに対し、『至上の愛』は彼の幼児からの宗教体験に回帰した点で隔絶しているのだ、という謎解きには納得した。
晩年には練習風景を観客が安く覗(のぞ)けるロフトを探していたとか、オリジナル・テープは廃棄されたといった逸話も満載。
朝日新聞 2006年3月26日
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