書評

『少年民藝館』(筑摩書房)

  • 2018/10/15
少年民藝館 / 外村 吉之介
少年民藝館
  • 著者:外村 吉之介
  • 出版社:筑摩書房
  • 装丁:単行本(196ページ)
  • 発売日:2011-03-19
  • ISBN:4480857966
内容紹介:
暮らしの中の美しいものたち。世界中の美しい工藝品を紹介。
初めて世に出たのは二十四年前というロングセラー本なので(ALL REVIEWS事務局注:本書評執筆時期は2008年。『少年民藝館』初版は1984年)、今さら紹介するまでもないと思っていたのだけれど……なかなか趣味のいい女友だちがこの本のことを知らなかったので、案外一般には知られていないのかもしれないと思った。もったいない。

決して安価な本ではないけれど、カラフルな表紙からして楽しく、所有せずにはいられなくなる。著者は柳宗悦(むねよし)の提唱する民藝運動に参加。倉敷民藝館や熊本国際民藝館の館長をつとめた人(この本が出版された九年後、九十五歳で亡くなった)。

一口に言うなら世界民藝図鑑。タイトルや文章からして、子どもにも読ませたいという気持で書かれた本なのだろう。世界の各地、それぞれの風土と暮らしの中から無名の人びとが作り出し、受け継いで来た、美しい道具類や雑貨の数かずをたくさんの写真で紹介している。

例えばブリキで作った鳥の形のローソク立て(アメリカ)、羊毛や麻で作ったショルダーバッグ(ペルー、エクアドル、イラン)、フェルトに刺繍をほどこした毛氈(もうせん)(イラン、インド)、柳の木で簡易に作った椅子(中国)……など。もちろん、日本のものもたくさん紹介されている。色模様のむしろ、たたみ草の円座、竹籠、竹すだれ、お餅で作った花、アイヌ模様の衣類……など。

私がこの本を入手したのは十年ほど前。柳宗悦の民藝運動には惹かれてはいたけれど、私にはちょっと渋すぎるというか堅すぎる趣味かなあ、という違和感もかすかにあった。

けれどこの『少年民藝館』(用美社)はさすが子ども向きに書かれたせいか(?)気やすく、親しみやすいものが多く、スンナリと入りこめた。以来、国内外の旅行に出る時は、「あそこに行ったら、あれを探そう」という、一つの指標になった。

著者は「まえがき」でこう書いている。「見せかけの、形も色も悪い道具類を毎日使っていると、心まで粗末な人になってしまいます。ですから形も色も良く、たよりになる健康な美しい道具を選びたいものです」。

「この『少年民藝館』は、見せかけの駄目なもの、着飾った怠けもの、高くて威張っているような道具を捨て、健康で無駄がなく威張らない美しさを備えてよく働く、良い友だちをみなさんに紹介したいと思って、世界中の美しい工藝品を選んで並べました」

「これらのものを作ったのは、特別に偉い人ではなく、世間に名も知られない普通の工人(こうじん)たちです」

著者は熱心なクリスチャンだったせいもあるだろうが、精神主義的すぎるなあと感じたが、うん、やっぱり正しいことを言っている。

【この書評が収録されている書籍】
アメーバのように。私の本棚  / 中野 翠
アメーバのように。私の本棚
  • 著者:中野 翠
  • 出版社:筑摩書房
  • 装丁:文庫(525ページ)
  • 発売日:2010-03-12
  • ISBN:4480426906
内容紹介:
世の中どう変わろうと、読み継がれていって欲しい本を熱く紹介。ここ20年間に書いた書評から選んだ「ベスト・オブ・中野書評」。文庫オリジナルの偏愛中野文学館。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

少年民藝館 / 外村 吉之介
少年民藝館
  • 著者:外村 吉之介
  • 出版社:筑摩書房
  • 装丁:単行本(196ページ)
  • 発売日:2011-03-19
  • ISBN:4480857966
内容紹介:
暮らしの中の美しいものたち。世界中の美しい工藝品を紹介。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

初出メディア

家庭画報

家庭画報 2008年4月号

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