この数十年の間に、フクロウをテーマにした書物は数多く刊行されてきました。これにはそれなりの理由があります。フクロウはテーマとして魅力的なのです。本書が他のそうした類書と決定的に異なるのは、個人的な体験談と、北米に生息する多くの種と身近に暮らしてきた中で制作した絵をふんだんに収録している点です。
長年にわたって自宅や庭にたくさんのフクロウが棲みつくという機会に恵まれたおかげで、情報を入手し、科学的かつ情緒的な体験をすることができました。そんなわけで本書は、わたしたち家族が長年にわたってさまざまなフクロウと出会った経験──わたしたちが観察したこと、こうした出会いの結果としてわたしたちが感じたこと、わたしたちがフクロウから学んだこと──の記録です。
フクロウは、肉食鳥としての生活を送るにふさわしい進化を見事に遂げてきました。場所に関する記憶力に優れ、ほとんど真っ暗な中でも木々の枝をすり抜けるように巧みに飛翔します。探求的で、情熱的で、攻撃的で、欺瞞的、そしてときにきわめて勇敢な生き物です。喜びや恐怖を感じ、ひとたび雌雄の関係を築けば離れることがありません。わたしたち人類が生態系に爪痕を残し、この惑星をこれ以上汚染することになれば、その変化の影響をまともに被るのがフクロウです。ここに掲載したイラストや体験談はすべて、たくさんの種のフクロウとじかに触れ合った体験を基にしたものですが、フクロウが直面する環境条件という文脈でフクロウのことを考えて初めて、こうした体験が真に意味を持つことになるのです。
まずは、わたしたち家族がニシアメリカオオコノハズクと親密に過ごした約四半世紀について詳しくお話しします。この特異な体験を、ニシアメリカオオコノハズクの一生における丸々一年間の記録として紹介し、わたしが彼らに対して育んだ敬意と愛着について検証します。続いて、フクロウは他の鳥とどう違うのかという点について考えてみたいと思います。フクロウの珍しい特徴についても触れます。フクロウが人類に大きな影響を及ぼしてきたということを伝えるために、フクロウにスポットを当てた文化史の一端、そしてわたしの人生においてフクロウがなぜここまで芸術的関心の的となってきたかに関しても簡単に紹介します。後半の章では、人類と共生する存在という観点から北米に生息するフクロウ、生息環境が少なからず特殊なフクロウ、そして基本的に僻地の荒野に生息するフクロウを、注釈つきで観察しています。
わたしは本書が、フクロウを観察したいと思っている人とフクロウそのものの間に橋を架けられるようにと願っています。フクロウを観察するだけでなく、フクロウについてどのような感情を持ちうるかということをお伝えしたいと思っているからです。わたしたちと自然との出会いは、しばしば打ち切られて短期間で終わることが多く、確かにそこにあるものに対して思慮深い手段を取るというよりは、一瞥するにとどまる傾向にあります。本書に収めた体験談は、フクロウを観察する人たちにも、フクロウから学び、フクロウの世話をする者となるお手伝いをさせてもらえるものと思います。
挿画に関しては、個人的な解釈であり、おおむね直接的かつ親密な観察に基づいています。フクロウと共に過ごしたわたしの時間や経験は異色ではありますが、鳥類に関してどのように書けばいいか、また描写すればいいか、参考にしていただければと思います。根気と努力を持ち合わせていれば、紙とペンを用意して、フクロウについて目にしたことや耳にしたことに関して感じたことを記録し、目撃したものを言葉だけでは表現しきれない場合にはスケッチもしたくなるでしょう。野外調査での日々を記録している人であれば、わたしの経験をまとめた本書をどうぞ参考になさってください。わたし自身、メモや簡単なスケッチを見て振り返りながら、フクロウとの経験がこれほど強烈に記憶に残っていたことは驚きでした。わたしたちの記憶の中で、フクロウは大切な位置を占めているのです。
わたしが取ってきた手法は、この素晴らしい鳥に対する芸術家兼博物学者としての反応を重視するというものです。個人的なトーンには、フクロウに対するわたしの大いなる驚嘆の念が反映されています。親密に触れ合った時間と持てるかぎりの科学的知識を組み合わせることで、読者の方々がフクロウと触れ合う体験が広がります。その結果として、わたしたちの環境条件やその将来に関する決定が、フクロウの幸せを考慮することなく下されないことを願っています。
鳥類というものは、わたしたちの心の中でつねに独特の位置を占めています。フクロウは特にそうです。鳥が空を飛ぶ能力はいつでもわたしたちに畏敬の念を呼び起こしますが、フクロウは基本的にわたしたちが活動的でない時間帯、わたしたちがあまりよく知らない時間帯に動き出します。夜にフクロウが存在するおかげで、わたしたちもその一部である夜の生態系の全容に目を配り、耳を傾け、頭を働かせることができます。そうすることで、個人的な関わりから得られた大きな恩恵に、手応え、それらに関する知識、創造性を発揮する機会、といったものが与えられるのです。
[書き手]トニー・エンジェル(作家・画家・彫刻家)