40カ国、100種を超える動物を撮影してきたテレビディレクターの取って置きの話が14話。
サハラ砂漠の海岸近くを移動するイムラゲン(漁師の意)は、イルカが岸に追い込んできたボラの群に網を投げて漁をする。イルカはこの時逃れようとするボラを捕らえるのだ。アメリカのフロリダ半島ではイルカだけで魚を囲み、逃げる魚を捕らえている。人間との協力は日常の生活術の変化型なのだ。南米のフサオマキザルも興味深い。類人猿とは最も離れた系統のこのサルが、みごとな二足歩行をする。その時手にするのはヤシの実とそれを割るための石であり、実を割る台のある所まで歩いていく。子どもの頃から試行錯誤を辛抱強く2~4年くり返す。この先、ヒトが歩いた進化の道を行く可能性はあるのだろうか。著者は百万年後にはここに村ができているかもしれないと思うと愉快だと書く。
子育てする古代魚、空中で産卵する熱帯魚、農耕するアリとオオカミの友情、命がけで川を渡るゾウなど。自然の中にある物語を「ねえねえ、生きものってね」と誰かに聞いてほしくなったという著者の気持ちがよく分かる。