退屈な読書
- 著者:高橋 源一郎
- 出版社:朝日新聞社
- 装丁:単行本(253ページ)
- 発売日:1999-03-00
- ISBN-13:978-4022573759
- 内容紹介:
- 死んでもいい、本のためなら…。すべての本好きに贈る世界でいちばん過激な読書録。
その他の書店
ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、
書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。
ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。
そして料理も、そんな彼女たちと同様だ、と言ってしまいたい誘惑にかられる。何しろ、ほとんどの前菜にキャビアがのっかっているのだから。それはさながら手首で光るロレックスといったところ。その違いといったら、ロレックスは時を告げてくれるけれど、ここのキャビアは金属くさい味がして穏やかではないし(勘定に対しては特に)、実のところそれほど洗練されているということもない。……。主菜の「スズキのバジリコ風味」は、料理長がいかにソースをうまく作れるか、ということを言うための一品。魚の言い分もあったろうに(いや、なかったのかもしれない)。結局は、パンの切れ端でもその役を果たしえたはず、というわけだ。そうすれば値段も安くなる。デザートもまたしかり。アメをかけたリンゴとパイ生地を別々に調理することによって、タルト・タタンを自分風にアレンジしたかったのかもしれないけれど、私に言わせればそれはほんとうじゃない。なぜなら、タルト・タタンの本質そのものが、一緒に調理することで果物とパイ生地のマリアージュ(結婚)を生み出す、その特別な調理法にあるのだから。
ランディスは、三〇年代風の堅苦しいスタイルを再現できたと思っているのかもしれない。最初の一時間ほど、ランディスはあらゆるディテールをとくと頭におさめてくれというように、それぞれの場面を強調し、固定していく。まるで「本当のわたしはもっと利口だ」といっているようだ。ついに、あなたは座席から立ち上がって、こうさけびたくなる。「そうか? じゃ、早く証明してみろ」この映画はもったいぶっている――どの構図もじっと静止したきりなので、もたもたするな、とカメラの尻をけっとばしたくなる(『映画辛口案内』ポーリン・ケイル著、浅倉久志訳、晶文社)。
久々の新作。ぼくは読みながら頭が痛くなった。いや、ぼくだけではなく、この作品を読む読者は誰だってそうなるかもしれない。ここに出てくる恋愛感情はテレビドラマのそれのように現実味がない。この作品はまるで、女子高生の恰好をしているCMの西田ひかるのようだ。ファン以外にとっては、ブリッ子と呼ぶのもおそろしい。