目の前で行われた死の意味を問う
安楽死が認められた国で主体的に死を選ぶ人々を訪ね歩いた『安楽死を遂げるまで』の続編は、その本を読んだ多系統萎縮症を罹患した日本人女性から、「安楽死をスイスにて行うつもりです」とのメールを受け取るところから動き出す。スイスにある自殺幇助団体のもとで旅立ちを迎えるまでの、当人や家族の葛藤を中心に描くが、その葛藤は著者自身にも伝播する。「死期を早める行為を実現させたのは、私かもしれない」。女性は、あくまでも「個人的な死」であり、同じ難病を持つ人々の希望を奪わないでほしいと告げる。
安楽死に向かう人の感情をただ受け止めることはせず、自殺幇助の曖昧さに悩み、それでも目の前で行われた死の意味を問う。生き続けることの恐怖を煽る風土に加担する本ではない。答えの出ない問い、他者が答えを出してはいけない問いが読後の体に残る。「絶対と呼べる正当性を見出せられない」という、困惑したままの帰着が重い。