前書き

『文庫 中世奇人列伝』(草思社)

  • 2019/08/23
文庫 中世奇人列伝 / 今谷 明
文庫 中世奇人列伝
  • 著者:今谷 明
  • 出版社:草思社
  • 装丁:文庫(258ページ)
  • 発売日:2019-08-06
  • ISBN:4794224117
内容紹介:
史上たった一人、二度にわたり将軍となった「足利義稙」、幕府に楯突き壮絶な最期を遂げた承久の乱の黒幕「法印尊長」、異郷をさすらい、刑死の憂き目を詩を唱えることで免れた傑僧「幸村友梅」――日本史上最も魅力的な時代である中世には、幾人もの知られざる才人、奇人が埋もれている。人名事典… もっと読む
史上たった一人、二度にわたり将軍となった「足利義稙」、
幕府に楯突き壮絶な最期を遂げた承久の乱の黒幕「法印尊長」、
異郷をさすらい、刑死の憂き目を詩を唱えることで免れた傑僧「幸村友梅」

――日本史上最も魅力的な時代である中世には、幾人もの知られざる才人、奇人が埋もれている。
人名事典にさえ載っていない彼らの知られざる業績、型破りな生涯を
膨大な史料から徹底的に掘り起こした学殖ゆたかな名著。



幕府に楯突いた院近臣
法印尊長(一一六六年 -一二二七年)
華麗な家系/法勝寺の執行/獅子丸騒動/寺社紛争の調停/一条家の没落/
尊長逃亡す/壮絶な死

政治に深入りした歌人
京極為兼(一二五四年 -一三三二年)
才にあふれた血筋/君臣水魚/謎の失脚/永仁の南都闘乱/勅撰をめぐる論争/
ふたたび配所の月

中国で辛苦した傑僧
雪村友梅(一二九〇年 -一三四六年)
中国禅僧の侍童/斬首に臨む/幽囚十三年/赦免、江南へ/故山に帰る/
友梅の再発見

幕府がひれ伏した女院
広義門院(一二九二年 -一三五七年)
危機を収拾する女性/若年で天皇の「母」に/国母となる/中先代の乱にまきこ
まれる/三上皇、拉致される/大空位時代/奇手「天下一同法」/女人政治の中世

室町のマザー= テレサ
願阿弥(生年不詳 -一四八六年)
将軍義政の夢枕/寛正の大飢饉/募金、収容所建設/諸寺社炎上/
清水坂に住む者たち/老骨に鞭打って

流れ公方
足利義稙(一四六六年 -一五二三年)
応仁の乱の大波/「棚からぼた餅」の将軍就任/クーデター/京都奪回戦/
亡命十五年/将軍と天皇/逐電公方/細川高国との確執
史上たった一人、二度にわたり将軍となった「足利義稙」、幕府に楯突き壮絶な最期を遂げた承久の乱の黒幕「法印尊長」、異郷をさすらい、刑死の憂き目を詩を唱えることで免れた傑僧「幸村友梅」……。日本史上最も魅力的な時代=中世には、幾人もの知られざる才人、奇人が埋もれていますが、そんな彼らの知られざる業績、型破りな生涯を、膨大な史料から徹底的に描き出します。以下に、著者による前書き(一部改変)を掲載します。

日本史上に埋もれた型破りな人々の生涯を掘り起こす

私は日本中世史を専門としていて、かけだしの、大学院生や助手時代の若い頃から、もっぱら政治史を研究の対象としてきた。歴史は人間の営みの結果である以上、人々がどのような考え方をもち、どのように行動したかが、政治の核心のテーマであったはずだが、そのように悟ったのは比較的近年のことであって、若いときは人物論にはあまり関心がなかった。

そのような筆者の若年時の考え方は、私が元来経済史学の畑で育った(学部学生の頃)こと、「歴史は個人がつくる」という考え方にかなり抵抗を抱いていたことと関係があるかもしれない。

私のその頃の研究対象は、幕府の制度とか、地方の守護大名の統治機構とか、そういう集団のあり方ばかりに関心が向かっていたのだった。いまになってふりかえってみると、当時は意識的にそうしていたのだろう。人物論などは学問の対象にならないといった考え方が頭のどこかにあって離れなかったように思われるのである。

ところが、馬齢を重ねて年を食ってくると、史上に活躍した人々の生き方、考え方といった面に強く興味が向かうようになってきた。それは人並みに人生経験を積み、世の中とはかならずしも理屈どおりに動くものではない、人の世は不条理の連続であると感じるようになってきたことが関係しているのかどうか、ともかく個人の生き方にひどく気を引かれて、伝記的興味がしきりにそそられるのである。

それも、私の場合は、義満とか、信長とか、そういったいわゆる英雄や著名人ではなく、その脇役か、あるいはまったく無名の、または多少有名でも意外な面が人に知られていない、といった本筋からはずれた人々に思い入れが向かうのである。

商売柄、古文書や古記録(日記)など、古い時代の人々によって書かれた文章を読み、眺めることが仕事の大部分を占めるのだが、そうしたとき、「あれ、この事実はいままで知られてなかったな!」とか、「この人物がこんなことをやっていたのか」と、未知の事実に驚かされることが多い。

しかし専門家の業務である論文に使えないとなると、右のような大小のエピソードは、打ちすててそのままになることがほとんどである。しかし、メモなど取らなくても、妙にそんな記事や思いつきこそ記憶に残るもので、授業の余談などで学生に話し、反応があるとなると今度は、「一般の人々にも知ってもらいたい」と、つい欲が出てくることになる。

今回、編集子から執筆の要望があったのを機会に、そうした“主流はずれ”の人物論をテーマにすえることにした。そうした人々の種々の「生きざま」を通観することにより、中世とはどのような時代・社会であったのかが少しでも浮かびあがってくるようになれば、この企画は成功であるかもしれない。

なお、本書では原史料(古記録)の引用個所について、一般読者には難解であるため、多くを現代語訳した。翻訳が困難な部分は思い切って意訳したものもあるので御了解を得たい。

また、本書でいう“奇人”とは、今日いう奇人・変人の意味ではかならずしもない。数奇なる運命をたどった人、常人とは少し変わった生き方をした人物、というくらいに受けとっていただければ幸いである。

[書き手] 今谷明 (いまたに・あきら)
1942年京都生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得。文学博士。日本中世史専攻。横浜市立大学教授、国際日本文化研究センター教授を経て都留文科大学学長、現在、国際日本文化研究センター名誉教授
文庫 中世奇人列伝 / 今谷 明
文庫 中世奇人列伝
  • 著者:今谷 明
  • 出版社:草思社
  • 装丁:文庫(258ページ)
  • 発売日:2019-08-06
  • ISBN:4794224117
内容紹介:
史上たった一人、二度にわたり将軍となった「足利義稙」、幕府に楯突き壮絶な最期を遂げた承久の乱の黒幕「法印尊長」、異郷をさすらい、刑死の憂き目を詩を唱えることで免れた傑僧「幸村友梅」――日本史上最も魅力的な時代である中世には、幾人もの知られざる才人、奇人が埋もれている。人名事典… もっと読む
史上たった一人、二度にわたり将軍となった「足利義稙」、
幕府に楯突き壮絶な最期を遂げた承久の乱の黒幕「法印尊長」、
異郷をさすらい、刑死の憂き目を詩を唱えることで免れた傑僧「幸村友梅」

――日本史上最も魅力的な時代である中世には、幾人もの知られざる才人、奇人が埋もれている。
人名事典にさえ載っていない彼らの知られざる業績、型破りな生涯を
膨大な史料から徹底的に掘り起こした学殖ゆたかな名著。



幕府に楯突いた院近臣
法印尊長(一一六六年 -一二二七年)
華麗な家系/法勝寺の執行/獅子丸騒動/寺社紛争の調停/一条家の没落/
尊長逃亡す/壮絶な死

政治に深入りした歌人
京極為兼(一二五四年 -一三三二年)
才にあふれた血筋/君臣水魚/謎の失脚/永仁の南都闘乱/勅撰をめぐる論争/
ふたたび配所の月

中国で辛苦した傑僧
雪村友梅(一二九〇年 -一三四六年)
中国禅僧の侍童/斬首に臨む/幽囚十三年/赦免、江南へ/故山に帰る/
友梅の再発見

幕府がひれ伏した女院
広義門院(一二九二年 -一三五七年)
危機を収拾する女性/若年で天皇の「母」に/国母となる/中先代の乱にまきこ
まれる/三上皇、拉致される/大空位時代/奇手「天下一同法」/女人政治の中世

室町のマザー= テレサ
願阿弥(生年不詳 -一四八六年)
将軍義政の夢枕/寛正の大飢饉/募金、収容所建設/諸寺社炎上/
清水坂に住む者たち/老骨に鞭打って

流れ公方
足利義稙(一四六六年 -一五二三年)
応仁の乱の大波/「棚からぼた餅」の将軍就任/クーデター/京都奪回戦/
亡命十五年/将軍と天皇/逐電公方/細川高国との確執

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