前書き

『アジアの世紀 上:接続性の未来』(原書房)

  • 2019/12/05
アジアの世紀 上:接続性の未来 / パラグ・カンナ
アジアの世紀 上:接続性の未来
  • 著者:パラグ・カンナ
  • 翻訳:尼丁 千津子
  • 出版社:原書房
  • 装丁:単行本(306ページ)
  • 発売日:2019-11-21
  • ISBN-10:4562057068
  • ISBN-13:978-4562057061
内容紹介:
「世界はアジア化する」。世界の変化の最前線に身を置いてきた著者だから断言できる、壮大なスケールと圧倒的な情報量で伝える「アジアの本当の力」とは。
著者来日! 世界経済フォーラムYGLに選ばれ、「21世紀におけるもっとも影響力ある75名」(『エスクァイア』誌)にも選定されたパラグ・カンナ氏。各国首脳にも注目されるカンナ氏の新刊(上下巻)ついに刊行!
ベストセラー『接続性の地政学』でカンナ氏は、情報ツールや流通改革によって国境を超えたつながりが強くなり、やがてそれは「世界の総中流化」を呼ぶと説いた。これに続く本書は、アジアに軸足を置いた「接続性」と世界にもたらす影響について描いている。
これから日本はアジア諸国とどう向き合っていくべきなのか、膨大な情報と分析力に支えられた本書は、示唆に富んでいる。本書の序章(一部)を公開する。

「アジアの世紀」は始まっている

2001年9月11日のアメリカでのテロ攻撃から2003年のイラク戦争、2007年から2008年までの世界金融危機を経て、ドナルド・トランプが選ばれた2016年11月のアメリカ大統領選挙までの約20年間は、その前の数十年にわたる欧米による支配が一気に破綻した時代として記憶されるだろう。
アフガニスタン紛争とイラク戦争の失敗、ウォール街と庶民の生活の乖離、ロシアとトルコを「欧米」に組み入れられなかった事態、大衆迎合主義者による民主主義の「乗っ取り」。こうしたいくつもの顕著な出来事によって、欧米のエリートたちは、自身の政治的、経済的、社会的な価値の将来性に疑問を呈するようになった。
今日の欧米社会は、債務の増加、不平等の拡大、政治の分極化、文化戦争といった自国の病に悩まされている。
アメリカのミレニアル世代は、テロとの戦い、平均所得の低下、人種間の緊張の高まり、銃による恣意的な暴力、政治家の大衆扇動とともに育ってきた。
ヨーロッパの若者たちは、経済の縮小、高い失業率、現状に疎い政治家たちに苦しめられている。欧米では通信から医薬にいたるさまざまな技術が世界に先駆けて目覚ましい発展を遂げたが、その地域の人々が享受した恩恵は決して公平ではなかった。

欧米が冷戦を戦い勝利しているあいだに、アジアが追いついてきた。過去40年間において全世界の経済成長に最も貢献したのはアジアで、最も貢献できなかったのは欧米、特に中間層の工場労働者である。
この傾向はアジアでの製造業の台頭に牽引されている。この20年間、何十億ものアジアの若者たちは地政学的な安定、急速な発展と繁栄、自国に対する誇りの高まりを肌で感じながら育ってきた。
彼らが知っている世界は欧米が支配するものではなく、アジアが優位に立っているものだ。私の同僚であるシンガポールのキショール・マブバニは、1998年に出版した挑発的な論説集『アジア人は思考できるのか?』のなかで欧米に対して、世界情勢は転換しつつあり、逆にアジアにもアメリカやヨーロッパに教えられることがたくさんあるのだと警告した。
アジアの人々が何かしらの共通の世界観を持つようになった現在、彼らが思考できるかどうかではなく、どういったことを考えているのかを探るときがきた。

アジアは自身が世界の中心であると再び思うようになっていて、しかもそれはこの先も変わらないと考えている。
西はアラビア半島やトルコから東は日本やニュージーランドまで、そして北はロシアから南はオーストラリアにいたるアジア経済圏は今や世界のGDPの半分を占め、しかも世界の経済成長の3分の2を担っている。
全世界の中間層の消費は、2015年から2030年にかけて30兆ドル伸びると予測されているが、そのなかで今日の欧米諸国によるものは1兆ドルにすぎないと考えられている。しかも、残りの大半はアジアでのものだ。
アジアはほかのどんな地域よりも多くの製品を輸入して消費するだけでなく、生産や輸出についても同様であり、しかも欧米に対する貿易や投資よりもアジアの国同士での経済活動のほうが多い。
アジアはいくつもの経済大国、世界の外貨準備高の大半、世界最大級の銀行、工業製品メーカー、技術系企業を有している。また、世界の大規模な軍隊のほとんどがアジアにある。
さらに、アジアは世界の人口の6割を擁している。アジアにはヨーロッパの10倍、北アメリカの12倍もの人々が暮らしているのだ。世界の人口が安定期に入るとされるおよそ100億人に向けて増加するなかで、アジアは常にほかの地域の人口をすべて合わせたよりも多くの人が生活する場所でありつづけるだろう。
今、アジアの人々は声をあげようとしている。アジアの観点から見る世界はどんなものだろうか。

[書き手]パラグ・カンナ(1977年、インド生まれ。ジョージタウン大学外交学部で学士号、同大学院で修士、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)で博士号取得。ブルッキングス研究所研究員、ニューアメリカ財団研究員、リー・クアンユー公共政策大学院研究員、アメリカ国家情報会議「グローバルトレンド2030プログラム」アドバイザー、アメリカ特殊作戦部隊アドバイザーなど歴任。世界経済フォーラムの「若き世界のリーダー」、『エスクァイア』誌の「二一世紀における最も影響力のある75名」、『ワイアード』誌の「スマートリスト」に選出された)(尼丁千津子訳)
アジアの世紀 上:接続性の未来 / パラグ・カンナ
アジアの世紀 上:接続性の未来
  • 著者:パラグ・カンナ
  • 翻訳:尼丁 千津子
  • 出版社:原書房
  • 装丁:単行本(306ページ)
  • 発売日:2019-11-21
  • ISBN-10:4562057068
  • ISBN-13:978-4562057061
内容紹介:
「世界はアジア化する」。世界の変化の最前線に身を置いてきた著者だから断言できる、壮大なスケールと圧倒的な情報量で伝える「アジアの本当の力」とは。

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