書評

『書淫日記: 万葉と現代をつないで』(ミネルヴァ書房)

  • 2022/11/08
書淫日記: 万葉と現代をつないで / 上野 誠
書淫日記: 万葉と現代をつないで
  • 著者:上野 誠
  • 出版社:ミネルヴァ書房
  • 装丁:単行本(290ページ)
  • 発売日:2013-06-20
  • ISBN-10:462306655X
  • ISBN-13:978-4623066551
内容紹介:
万葉の時代から近代までの文学・文化を、日常生活の様々な事象に落とし込みながら、魅力ある語り口で書き綴る。著者の生い立ちも盛り込まれ、著者独特の世界観へと読者を誘い、惹き込む。

研究の話で笑わせる語り芸

「書淫(しょいん)」は、著者によれば、本を読むこと、買うことに過度に傾くことで、オタクと似て内向きの幸福に浸るところがあり、つい鼻白んでしまいもする。ところが著者は、他人を歓(よろこ)ばせることで幸福感に浸るという珍しい書淫。専門の万葉研究のことでも、瑣末(さまつ)なほじくりを自虐的に描いて、逆に読者をぐいと引き込む。千年を優に超える万葉解釈のバトンリレーの一員をみずから任じ、ちょっと愉快な現代訳にも精を出す。

そんな研究の周辺を、ぷっと噴きだすようなエピソードふんだんに書き綴(つづ)る。古事記から高橋是清の自伝、阿部定の予審調書、吉村昭の文体まで32の読書記は、美でなく笑いの絢爛(けんらん)となる。今ではほとんど知られない本も多く、それを全部すぐにも注文したくなる。語り部というより語り芸の人なのだ。自分を貶(おとし)めても人を歓ばせたい、そこのところが、私、関西人としてはちょっと切なくないでもないが。博多に住む母親の話には身を洗われる。
書淫日記: 万葉と現代をつないで / 上野 誠
書淫日記: 万葉と現代をつないで
  • 著者:上野 誠
  • 出版社:ミネルヴァ書房
  • 装丁:単行本(290ページ)
  • 発売日:2013-06-20
  • ISBN-10:462306655X
  • ISBN-13:978-4623066551
内容紹介:
万葉の時代から近代までの文学・文化を、日常生活の様々な事象に落とし込みながら、魅力ある語り口で書き綴る。著者の生い立ちも盛り込まれ、著者独特の世界観へと読者を誘い、惹き込む。

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2013年09月1日

朝日新聞デジタルは朝日新聞のニュースサイトです。政治、経済、社会、国際、スポーツ、カルチャー、サイエンスなどの速報ニュースに加え、教育、医療、環境、ファッション、車などの話題や写真も。2012年にアサヒ・コムからブランド名を変更しました。

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