書評
『生きながら十代に葬られ』(イースト・プレス)
理解されない苦しみは手放さずに生きていく
小学校高学年の頃、図工室で隣り合ったやんちゃ者から「中学の〇〇先輩がお前をボコボコにしたいらしいよ」と言われたことがある。怖くなって次の日、学校を休んだ。今思えばウソだと気付ける話でも、当時は抱えきれないほどの重荷になった。その重荷を誰かに与えてしまったこともあるのかもしれない。「私はずっと長い間、自分を受け入れてくれない世界で生きていた」と述べる著者が、クラスメイトから受けてきたイジメ、親との確執を辿りながら、葬ってきた十代を思い起こす。
あの頃は、大人になった今と比べても、視界がとっても曇りやすかった。これでいいのだろうか、これではいけない、ならば、どうしたらいいのか。負のサイクルが続き、気付けば相当なスピードで沈み込んでいる。
小学生のころからたくさんの悪口を浴びていた。友達はいない。「鉛筆の長さを揃えたりして時間を潰し」ているような日々が続く。幼い頃に受けた虐待の記憶も暗い影を落としていた。
そんな中で「人生は辛い、苦しい」と苦悶の表情で歌うジャニス・ジョプリンに出会う。「私はあなただ」と思い、支えになった。高校に入り、美大への道を親から否定されたころから、「自殺」という単語が頭の中を巡るようになる。自分の道を否定されたのに、「大学に行ったらどう?」と親に問われる。「家族が私の人生を今まさに決めようとしている」。自分の動きを自分で決められない憤りと焦燥感が混じり合っていく。
いまだに自分以外みんな敵、と思う日がある。幼い頃はもっとあった。著者はそう感じた日々をなんとか抜け出した。「幸せになることは過去の自分への一番の復讐だ」。自らの闇を受け止めるために、自ら光を照らす、その筆致に浸る一冊。
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