書評

『スペインとスペイン人―“スペイン神話”の解体』(水声社)

  • 2020/08/04
スペインとスペイン人―“スペイン神話”の解体 / フアン ゴイティソロ
スペインとスペイン人―“スペイン神話”の解体
  • 著者:フアン ゴイティソロ
  • 翻訳:本田 誠二
  • 出版社:水声社
  • 装丁:単行本(242ページ)
  • 発売日:2015-12-01
  • ISBN-10:4801001491
  • ISBN-13:978-4801001497
内容紹介:
一五世紀からはじまるスペイン黄金時代において、一枚岩の"スペイン性"なるドグマがつくられる…旧キリスト教徒という特定の血統にのみ与えられたこの神話は一方で、八世紀におよんで共存したイスラム教、ユダヤ教を迫害し、歴史的真実を抑圧することとなる…書くことの自由を求めてあえて「永遠の少数派」たらんとした亡命作家による、スペイン史の"他者"を根底から見つめなおす比類なき文明論。
毎年ノーベル文学賞の有力候補として名前のあがるスペイン文学の重鎮ゴイティソロは実に多面的な作家だが、円熟期の最大の主題はスペインの歴史の再検討だった。本書はその一群の作品の源泉となったスペイン人論である。

通俗的な歴史観では、スペインはイスラム教徒とユダヤ人を駆逐したことによって純血のカトリックの国になったとされる。異教的な要素は異端審問所などを通して徹底的に弾圧され排除されたが、実はそれは隠蔽されて残存し、イスラム、ユダヤ、キリストの三宗教の並存こそがスペインの美質を生んだとゴイティソロは分析する。そして、純血意識や多様性の排除こそがスペインの後進性を決定づけ、スペイン内戦のみならず、現代まで続くさまざまな対立の原因となったという。そのひとつが、十八か月以内に独立すると宣言しているカタルニアの分離独立問題だろう。

ある国の伝統と呼ばれるものは現実に存在するものではなく、支配層の願望にすぎない、という冷徹な分析は、日本の伝統を考える上でも参考になる。彼の小説をもっと読みたくなる。
スペインとスペイン人―“スペイン神話”の解体 / フアン ゴイティソロ
スペインとスペイン人―“スペイン神話”の解体
  • 著者:フアン ゴイティソロ
  • 翻訳:本田 誠二
  • 出版社:水声社
  • 装丁:単行本(242ページ)
  • 発売日:2015-12-01
  • ISBN-10:4801001491
  • ISBN-13:978-4801001497
内容紹介:
一五世紀からはじまるスペイン黄金時代において、一枚岩の"スペイン性"なるドグマがつくられる…旧キリスト教徒という特定の血統にのみ与えられたこの神話は一方で、八世紀におよんで共存したイスラム教、ユダヤ教を迫害し、歴史的真実を抑圧することとなる…書くことの自由を求めてあえて「永遠の少数派」たらんとした亡命作家による、スペイン史の"他者"を根底から見つめなおす比類なき文明論。

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初出メディア

読売新聞

読売新聞 2016.03.06

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