書評

『ウジェーヌ・ヴァルモンの勝利』(国書刊行会)

  • 2017/07/29
ウジェーヌ・ヴァルモンの勝利 / ロバート・バー
ウジェーヌ・ヴァルモンの勝利
  • 著者:ロバート・バー
  • 翻訳:平山 雄一
  • 出版社:国書刊行会
  • 装丁:単行本(329ページ)
  • 発売日:2010-10-26
  • ISBN-10:4336052921
  • ISBN-13:978-4336052926
内容紹介:
コナン・ドイルの友人で、ホームズもののパロディでも知られるロバート・バーの傑作短篇集、待望の初邦訳!エラリー・クイーンや江戸川乱歩が絶賛し、夏目漱石の作品にも登場する名作「うっかり屋協同組合」を含む全8篇を収録。

珍重すべきミステリーの古典

まことに珍重すべき、ミステリーの古典である。著者はコナン・ドイルと同時代の作家で、ホームズもののパロディーを書いたこともある、という。主人公のウジェーヌ・ヴァルモンは、フランスの刑事局長の座を追われ、ロンドンに渡って私立探偵になる。その、破天荒な活躍を描いた連作短編集。

本書は、〈我輩(わがはい)〉という一人称で書かれており、往年の保篠龍緒訳のアルセーヌ・ルパンものを思わせる、軽妙な語り口が心地よい。これは訳者のお手柄だろう。何より、ヴァルモンの気取った、それでいて憎めないキャラクターが、いちばんの収穫だ。ビクトリア朝の時代色が、よく出ている。捜査方法など、英仏のお国柄の違いを論じるおしゃべりも、おもしろい。

提示される謎と解決は、どれも古さを感じさせず、総じてルパンものより合理的である。中でもヴァルモンが、犯人一味の青年にやり込められる、「うっかり屋協同組合」は失敗談にもかかわらず、愛すべき小品に仕上がっている。

昔ながらの、読書の楽しみを思い出させてくれる、佳味あふれる作品集である。
ウジェーヌ・ヴァルモンの勝利 / ロバート・バー
ウジェーヌ・ヴァルモンの勝利
  • 著者:ロバート・バー
  • 翻訳:平山 雄一
  • 出版社:国書刊行会
  • 装丁:単行本(329ページ)
  • 発売日:2010-10-26
  • ISBN-10:4336052921
  • ISBN-13:978-4336052926
内容紹介:
コナン・ドイルの友人で、ホームズもののパロディでも知られるロバート・バーの傑作短篇集、待望の初邦訳!エラリー・クイーンや江戸川乱歩が絶賛し、夏目漱石の作品にも登場する名作「うっかり屋協同組合」を含む全8篇を収録。

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2011年1月16日

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