書評

『デカルトの密室』(新潮社)

  • 2024/05/20
デカルトの密室 / 瀬名 秀明
デカルトの密室
  • 著者:瀬名 秀明
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:文庫(617ページ)
  • 発売日:2008-05-28
  • ISBN-10:4101214360
  • ISBN-13:978-4101214368
内容紹介:
ヒト型ロボットが実用化された社会。ロボット学者の祐輔と進化心理学者の玲奈は、ロボットのケンイチと共に暮らしている。三人が出席した人工知能のコンテストで起こった事件から、悪夢のようなできごとは始まった。連続する殺人と、その背後に見え隠れする怜悧な意思が、三人を異世界へ引き寄せる―。人間と機械の境界は何か、機械は心を持つのか。未来へ問いかける科学ミステリ。
ロボットの情報処理と人間の思考を分かつものは何か? 自己意識、というのが一つの答えだろう。情報を処理するだけでなく、情報処理を行う自分を監視するもう一段上の視点(私という意識)をもつこと。本書の作者は、「私を思考する私」を人間の究極の条件とした哲学者にならって、自己意識を閉じこめる脳をデカルトの密室と呼ぶ。意識はこの密室を出ることができるか? これが本書の根本テーマである。

物語は、あるロボットが天才女性科学者を殺した事件から出発する。高度化されたロボットが、プログラムによらず自分の意志で人間を殺したとしたら、それこそ、意識がデカルトの密室を脱出するチャンスではないか。真の犯人は誰かという謎とともに、小説は、人間とは何か、機械に意識はありうるか、という問題に踏みこんでいく。

ロボット工学の実践的最前線と、意識をめぐる抽象的な思弁がダイレクトに結びついた刺激的な小説だ。
デカルトの密室 / 瀬名 秀明
デカルトの密室
  • 著者:瀬名 秀明
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:文庫(617ページ)
  • 発売日:2008-05-28
  • ISBN-10:4101214360
  • ISBN-13:978-4101214368
内容紹介:
ヒト型ロボットが実用化された社会。ロボット学者の祐輔と進化心理学者の玲奈は、ロボットのケンイチと共に暮らしている。三人が出席した人工知能のコンテストで起こった事件から、悪夢のようなできごとは始まった。連続する殺人と、その背後に見え隠れする怜悧な意思が、三人を異世界へ引き寄せる―。人間と機械の境界は何か、機械は心を持つのか。未来へ問いかける科学ミステリ。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2005年11月6日

朝日新聞デジタルは朝日新聞のニュースサイトです。政治、経済、社会、国際、スポーツ、カルチャー、サイエンスなどの速報ニュースに加え、教育、医療、環境、ファッション、車などの話題や写真も。2012年にアサヒ・コムからブランド名を変更しました。

  • 週に1度お届けする書評ダイジェスト!
  • 「新しい書評のあり方」を探すALL REVIEWSのファンクラブ
関連記事
中条 省平の書評/解説/選評
ページトップへ