書評

『アラバスターの手: マンビー古書怪談集』(国書刊行会)

  • 2024/12/18
アラバスターの手: マンビー古書怪談集 / A・N・L・マンビー
アラバスターの手: マンビー古書怪談集
  • 著者:A・N・L・マンビー
  • 翻訳:羽田 詩津子
  • 出版社:国書刊行会
  • 装丁:単行本(264ページ)
  • 発売日:2020-09-12
  • ISBN-10:4336070342
  • ISBN-13:978-4336070340
内容紹介:
少年を誘う不気味な古書店主、呪われた聖書台の因果、年代物の時禱書に隠された秘密、ジョン・ディーの魔術書の怪……ケンブリッジ大学図書館フェロー、英国書誌学会長を務めた特異な経歴の作家… もっと読む
少年を誘う不気味な古書店主、呪われた聖書台の因果、年代物の時禱書に隠された秘密、ジョン・ディーの魔術書の怪……ケンブリッジ大学図書館フェロー、英国書誌学会長を務めた特異な経歴の作家による、全14篇の比類なき書物愛に満ちた異色の古書怪談集!

前書き

甦ったヘロデ王
碑文
アラバスターの手
トプリー屋敷の競売
チューダー様式の煙突
クリスマスのゲーム
白い袋
四柱式ベッド
黒人の頭
トレガネット時禱書
霧の中の邂逅
聖書台
出品番号七十九
悪魔の筆跡

解説「怪奇小説の正統を目ざした文献学者」紀田順一郎
「好古家」という言葉をご存知だろうか。骨董品や稀覯(きこう)本を蒐集したり、史跡や碑文を調べたりする趣味の持ち主を指す。わたしはこの言葉を、英国の怪奇小説家であるM・R・ジェイムズの『好古家の怪談集』という有名な短篇集で知った。

本書『アラバスターの手』は、そのM・R・ジェイムズの系譜に連なる一冊である。副題には「マンビー古書怪談集」とあるが、必ずしも古書をめぐる怪談ばかりが集められているわけではない。全14篇の短篇は、どれも奇怪な出来事が起こり、その原因となるいにしえの故事が語られるというパターンに則っていて、その意味で好古家の怪談なのである。

こうした渋い英国怪奇小説の伝統も、いまではすっかり途絶えてしまった。わたしを含めて、こういうものを好む読者はマイナーな趣味の持ち主であり、好古家と呼ばれる資格が充分にある。著者のA・N・L・マンビーは書誌学者であり、怪談集はこれ一冊しか遺していないマイナー作家だという点も、実に好ましい。

「いつの時代にも新しい」とはよく使われる褒め言葉だが、好古家の怪談は、さしずめ「いつの時代にも古い」と言えるだろうか。
アラバスターの手: マンビー古書怪談集 / A・N・L・マンビー
アラバスターの手: マンビー古書怪談集
  • 著者:A・N・L・マンビー
  • 翻訳:羽田 詩津子
  • 出版社:国書刊行会
  • 装丁:単行本(264ページ)
  • 発売日:2020-09-12
  • ISBN-10:4336070342
  • ISBN-13:978-4336070340
内容紹介:
少年を誘う不気味な古書店主、呪われた聖書台の因果、年代物の時禱書に隠された秘密、ジョン・ディーの魔術書の怪……ケンブリッジ大学図書館フェロー、英国書誌学会長を務めた特異な経歴の作家… もっと読む
少年を誘う不気味な古書店主、呪われた聖書台の因果、年代物の時禱書に隠された秘密、ジョン・ディーの魔術書の怪……ケンブリッジ大学図書館フェロー、英国書誌学会長を務めた特異な経歴の作家による、全14篇の比類なき書物愛に満ちた異色の古書怪談集!

前書き

甦ったヘロデ王
碑文
アラバスターの手
トプリー屋敷の競売
チューダー様式の煙突
クリスマスのゲーム
白い袋
四柱式ベッド
黒人の頭
トレガネット時禱書
霧の中の邂逅
聖書台
出品番号七十九
悪魔の筆跡

解説「怪奇小説の正統を目ざした文献学者」紀田順一郎

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2021年2月6日

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