書評
『澁澤龍彦との日々』(白水社)
三島由紀夫や埴谷雄高が予言したように、澁澤龍彦の著作は、日本の知的風土を大きく変えた。
<知>が古い学問から脱して、人間の巨大な快楽的営みの一環となり、プラトンとボマルツォの怪物庭園が、同じ風景のなかで新たな光を放ちはじめたのだ。
この奇跡を支えたのは、澁澤の純粋な資質だった。彼の本は、彼の資質の告白である。だからファンは澁澤の人間性に惹(ひ)かれる。
本書は、そんな澁澤ファンにとって垂涎(すいぜん)・必読の贈り物である。十八年間、彼とほぼ全生活をともにした夫人の回想録だからだ。
だが、回想録などと無粋な言葉で呼ぶにはあまりに軽やか、傍らで話を聞いているような、やさしくお茶目な語り口が楽しめる。
どのエピソードも澁澤龍彦の人間を彷彿(ほうふつ)とさせるが、無類のくいしん坊だった夫を語る件(くだり)など、血肉と化した澁澤のエピキュリアンぶりを知ることができる。まことに稀有(けう)の精神であり、人間だった。
<知>が古い学問から脱して、人間の巨大な快楽的営みの一環となり、プラトンとボマルツォの怪物庭園が、同じ風景のなかで新たな光を放ちはじめたのだ。
この奇跡を支えたのは、澁澤の純粋な資質だった。彼の本は、彼の資質の告白である。だからファンは澁澤の人間性に惹(ひ)かれる。
本書は、そんな澁澤ファンにとって垂涎(すいぜん)・必読の贈り物である。十八年間、彼とほぼ全生活をともにした夫人の回想録だからだ。
だが、回想録などと無粋な言葉で呼ぶにはあまりに軽やか、傍らで話を聞いているような、やさしくお茶目な語り口が楽しめる。
どのエピソードも澁澤龍彦の人間を彷彿(ほうふつ)とさせるが、無類のくいしん坊だった夫を語る件(くだり)など、血肉と化した澁澤のエピキュリアンぶりを知ることができる。まことに稀有(けう)の精神であり、人間だった。
朝日新聞 2005年5月22日
朝日新聞デジタルは朝日新聞のニュースサイトです。政治、経済、社会、国際、スポーツ、カルチャー、サイエンスなどの速報ニュースに加え、教育、医療、環境、ファッション、車などの話題や写真も。2012年にアサヒ・コムからブランド名を変更しました。
ALL REVIEWSをフォローする