前書き

『北欧でみつけたサステイナブルな暮らし方: 食品ロスを減らすためにわたしたちにできること』(青土社)

  • 2022/11/08
北欧でみつけたサステイナブルな暮らし方: 食品ロスを減らすためにわたしたちにできること / 井出 留美
北欧でみつけたサステイナブルな暮らし方: 食品ロスを減らすためにわたしたちにできること
  • 著者:井出 留美
  • 出版社:青土社
  • 装丁:単行本(212ページ)
  • 発売日:2022-10-26
  • ISBN-10:4791775090
  • ISBN-13:978-4791775095
内容紹介:
食べ物とエコロジーの第一人者がSDGs最先端の国、北欧で見た食品ロスを防ぐためのヒントとは?ユニークな取り組みを徹底取材。
地産地消ホテル、余ったパンからアイスクリームを作る職人、食品廃棄物を燃料に走る市営バス、おしゃれな賞味期限切れスーパー…。北欧の企業のユニークな取り組みを徹底取材。より良い環境と未来を作るための方法とは。

はじめに

「北欧」と聞くと、どんなイメージが思い浮かびますか?

私のイメージは「白」でした。それも、ちょっと冷たい感じの白。

ところが、実際に行ってからは「緑」や「オレンジ」など、明るく暖かい色が思い浮かぶようになりました。

木々の緑、室内でつける灯りのオレンジ、デンマークの観光地、ニューハウンにあるカラフルな木造家屋。

食品ロスに関する最初の著書『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか』(幻冬舎新書、2016)を担当してくださった新書編集長の小木田順子さんが、「井出さん、そんなに書くのが好きだったら、Yahoo! オーサーになってみたらどうですか?」と、Yahoo! ニュース個人のオーサー(有識者や専門家の書き手)になることを勧めてくださいました。小木田さんいわく、食品ロスに関していろいろと活動していること全てを本で出すことはできないし、本を出版するには時間がかかるから、タイムリーに世に出すこともできない。でも、Yahoo! ニュースだったら、食品ロスの活動を、タイムリーに世に出すことができるから、と。

Yahoo! ニュース個人は、2012年9月にスタートした事業で、専門分野を持つ個人の書き手による情報発信をサポートし、社会課題の解決を目指す、というものです。

私の専門分野は「食品ロス」ということで、ヤフー株式会社の審査を受け、1ヶ月後に合格し、2017年3月11日から取材記事を書き始めました。

2018年には、幸運なことに、当時600名以上いたオーサーの中からYahoo!ニュース個人オーサーアワードを受賞しました。「発見と言論が社会の課題を解決する」というYahoo! ニュース個人のコンセプトを最も体現しているオーサーとして表彰され、2019年には、関心のあるテーマや地域で取材できることになったのです。そこですぐに思い浮かべたのが「北欧」でした。

なぜ北欧と思ったのか。スウェーデンのカールスタッド大学で食品ロスの研究をしているヘレン・ウィリアムズ博士に2016年10月に日本でお会いしたこともきっかけの一つかもしれません。ヘレンさんは、ノルウェーやデンマークで賞味期限表示をアバウトな形式に変えたところ、食品ロスが20%以上も減った、スウェーデン政府もこれに倣おうとしている、と話してくれました。また、講談社の雑誌『FRaU』2019年1月号ではスウェーデンのマルメ市が特集されていましたし、デンマークには食品ロスの分野で精力的に活動している社会活動家6章で取り上げたセリーナさんがいると知っていたので、北欧を選んだのです。

当時の企画書を改めて見返してみると、スウェーデン、デンマーク、オランダを取材対象としていて、候補として他にフィンランドも挙げています。フィンランドといえば、当時から食品ロス削減のための法整備化が進んでおり、法整備がなされる寸前だった日本でも関心を持つ人が増えていました。余剰食品を活用するレストランや、賞味期限切れ食品を扱うスーパーなど、魅力的な取材対象は多くありました。ただ、スケジュールと予算の兼ね合いを考慮して、スウェーデン、デンマーク、オランダの3カ国を3週間でまわることに決めたのです。

スウェーデンの取材に関しては、英国CMI認定サステイナビリティ(CSR)プラクティショナーという資格を取った時にお世話になった下田屋毅さんに、どなたか現地を紹介してくれる人がいないかを伺いました。そこで株式会社ワンプラネット・カフェの代表取締役エクベリ聡子さんと、取締役のペオ・エクベリさんを紹介していただき、お二人には大変お世話になりました。私からも取材先を推薦しましたが、マルメ市出身のペオさんの方がずっと詳しく、取材先とのアポイントもとってくださり、取材では撮影やスウェーデン語の通訳までこなしてくださいました。

この本は、こういったさまざまな方のおかげで取材することが叶い、Yahoo! ニュース個人で初めて書いた取材記事をまとめたものです。コロナ禍になる前に取材したもので、後に渡航が思うようにいかなくなることなど、当時は考えもしませんでした。本をまとめるにあたって、あらためて取材記事を読み返してみると、渡航できたこと、取材できたこと、企画を立てていただいたこと、などなど、本当に恵まれて実現したことを、しみじみと感じます。

取材で出会った方々の、自然体でポジティブな姿勢で一日一日を大切に過ごす姿勢は、私自身にも影響を及ぼしました。デンマークやスウェーデンの人たちは、仕事一辺倒ではなく、家庭や地域で過ごす時間、居心地のよさを大切にしていました。

この本を通して、北欧の素晴らしさ、食品ロスに対する真摯な取り組みを知っていただくきっかけになれば、こんなにうれしいことはありません。

【書き手】井出留美
北欧でみつけたサステイナブルな暮らし方: 食品ロスを減らすためにわたしたちにできること / 井出 留美
北欧でみつけたサステイナブルな暮らし方: 食品ロスを減らすためにわたしたちにできること
  • 著者:井出 留美
  • 出版社:青土社
  • 装丁:単行本(212ページ)
  • 発売日:2022-10-26
  • ISBN-10:4791775090
  • ISBN-13:978-4791775095
内容紹介:
食べ物とエコロジーの第一人者がSDGs最先端の国、北欧で見た食品ロスを防ぐためのヒントとは?ユニークな取り組みを徹底取材。

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