Z世代はおおむね《1997年から2012年の間》の生まれ。ネット環境と共に育った「デジタルネイティブ」だ。考え方や行動様式が独特で、社会を確実に変えつつある。著者はアメリカ政治外交史が専門。最近の動向を多角的に紹介する。
終わりのないテロとの戦い。拡大する所得格差。大統領選挙をめぐる混乱。保守とリベラルの分断。銃乱射事件の続発。保守化する最高裁。中絶論争。移民をめぐる論争。大学の高すぎる学費。…アメリカは矛盾だらけだ。現状を招いた上の世代は信用ならない、とZ世代は思う。そして活発に発言する。サンダース候補を応援したのもこの世代だ。
本書はアメリカの深層をつぶさに探る。たとえば中絶論争。半世紀前のロー判決(中絶の権利を認めた)当時、共和党有力者が中絶賛成だったり民主党有力者が反対だったりした。そのあとキリスト教福音派が台頭し、プロライフ(中絶反対)/プロチョイス(中絶賛成)が共和党/民主党の対立に重なった。多様な実態が単純な二元論に還元された。
アメリカの底流に迫るには補助線が何本も必要だ。Z世代は不可欠の一本。読み応え十分の一冊である。