米国副大統領のハリスも、若き詩人アマンダ・ゴーマンもオマージュを捧げる著者の『心に、光を。』は、不安との付き合い方を語るエンパワメントあふれるエッセイ集だ。
緊張やストレスに呑みこまれないようにするコツはなかなか言葉にできない。『心に、光を。』をひらけば、大国のファーストレディを八年間務めた著者が、不安がどこから来て、どう対処すべきかを、体験に基づいて言語化してくれている。
著者は苦境と不安に対する知恵を祖父母や父母から受け継いだのだ。祖父は父母方とも悪名高いジム・クロウ法(人種隔離法)下の南部からシカゴの街に移ってきた。父はミシェルが幼い頃に発症した病気が悪化し、だんだん身体が不自由になっていった。一家は白人の多い居住区において、いつも異質な存在だった。
そうしたなか、父母はつねに理論的にものごとを説明してくれ、平等や正義をめぐる問題についても説いてくれたという。本書の核心には、光とともに闇がある。それらが鬩(せめ)ぎあう中で生き抜いてきた著者だからこそ持てる真実みと言えるだろう。