書評

『信仰の現代中国:心のよりどころを求める人びとの暮らし』(白水社)

  • 2024/02/19
信仰の現代中国:心のよりどころを求める人びとの暮らし / イアン・ジョンソン
信仰の現代中国:心のよりどころを求める人びとの暮らし
  • 著者:イアン・ジョンソン
  • 翻訳:秋元 由紀
  • 出版社:白水社
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(430ページ)
  • 発売日:2022-08-30
  • ISBN-10:4560098662
  • ISBN-13:978-4560098660
内容紹介:
宗教と伝統行事を通して見えてくる中国社会の姿 弾圧から緩和、引き締め、そして包摂へ―毛沢東以来、共産党支配下における政治と宗教の関係は常にある種の緊張状態にある。本書は、この緊張… もっと読む
宗教と伝統行事を通して見えてくる中国社会の姿

弾圧から緩和、引き締め、そして包摂へ―毛沢東以来、共産党支配下における政治と宗教の関係は常にある種の緊張状態にある。本書は、この緊張状態の根源にあるものを掘り起こし、信仰と伝統行事のあり方を通して中国社会のもう一つの姿を描いたノンフィクションである。
物質的な欲望と拝金主義にまみれ、もはや伝統的な信仰心など消えてしまったかのように見える中国社会だが、旧暦に基づく季節の行事や古くからのしきたりが今も脈々と息づいている。いくら繁栄しても何かが足りない―その何かを求めて多くの人びとが信仰や伝統行事に目を向け実践するありさまを描くため、著者は約一年半、こうした活動に携わる家族や団体などと行動をともにしてきた。各種の行事を観察し、ときには自ら瞑想法・呼吸法の講習会に参加する。登場するのは、妙峰山の参拝客を相手に香会を営む倪家、農村で道教の儀式や占いをする李家、地方都市で地下活動を続ける牧師など、さまざまなバックグラウンドを持つ人びとである。
本書は二十四節気に沿った章立てで、季節の移り変わりとともにストーリーが立体的に展開する仕組みとなっている。海外の主要紙誌が絶賛した傑作だ。
倪(ニー)一家は北京郊外で毎年、碧霞元君(へきかげんくん)の廟のボランティアをする。元人権派弁護士の王怡(ワンイー)牧師は、成都でプロテスタント教会を始めた。李(リー)一家は山西省の田舎町の陰陽先生で、葬式や占いの専門家。市井の信仰を点描する良質なルポルタージュだ。

著者ジョンソン氏はジャーナリスト。法輪功の取材でピュリツァー賞を受けた。改革開放が曲がり角の中国に、宗教の出番はあるのか。根気づよく何年も取材を続けた。

歴代王朝は宗教を警戒した。政府や血縁に関係ない任意団体が急に力を持つ。儒教を手なずけても道教や民間信仰が暴れ出す。政府を上回る道徳や正義を天が実現するぞ!

文化大革命で廟や祠が壊された。改革開放後に、人びとはまた宗教に目を向けた。李一家は破壊を免れたメモから道教の儀礼書を復元した。宣教師が帰国しても中国人牧師がキリスト教を支え続けた。強欲で腐敗した中国社会は生きづらい。人びとは宗教の利他と献身でひと息つく。著者の筆から、人間の生き方の本質に触れる信仰の息づかいが聞こえてくる。宗教は中国の社会と人びとを再生させるのか。その芽を政府の強権が摘んでしまいそうで心配だ。
信仰の現代中国:心のよりどころを求める人びとの暮らし / イアン・ジョンソン
信仰の現代中国:心のよりどころを求める人びとの暮らし
  • 著者:イアン・ジョンソン
  • 翻訳:秋元 由紀
  • 出版社:白水社
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(430ページ)
  • 発売日:2022-08-30
  • ISBN-10:4560098662
  • ISBN-13:978-4560098660
内容紹介:
宗教と伝統行事を通して見えてくる中国社会の姿 弾圧から緩和、引き締め、そして包摂へ―毛沢東以来、共産党支配下における政治と宗教の関係は常にある種の緊張状態にある。本書は、この緊張… もっと読む
宗教と伝統行事を通して見えてくる中国社会の姿

弾圧から緩和、引き締め、そして包摂へ―毛沢東以来、共産党支配下における政治と宗教の関係は常にある種の緊張状態にある。本書は、この緊張状態の根源にあるものを掘り起こし、信仰と伝統行事のあり方を通して中国社会のもう一つの姿を描いたノンフィクションである。
物質的な欲望と拝金主義にまみれ、もはや伝統的な信仰心など消えてしまったかのように見える中国社会だが、旧暦に基づく季節の行事や古くからのしきたりが今も脈々と息づいている。いくら繁栄しても何かが足りない―その何かを求めて多くの人びとが信仰や伝統行事に目を向け実践するありさまを描くため、著者は約一年半、こうした活動に携わる家族や団体などと行動をともにしてきた。各種の行事を観察し、ときには自ら瞑想法・呼吸法の講習会に参加する。登場するのは、妙峰山の参拝客を相手に香会を営む倪家、農村で道教の儀式や占いをする李家、地方都市で地下活動を続ける牧師など、さまざまなバックグラウンドを持つ人びとである。
本書は二十四節気に沿った章立てで、季節の移り変わりとともにストーリーが立体的に展開する仕組みとなっている。海外の主要紙誌が絶賛した傑作だ。

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2023年1月28日

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