書評

『教養としての神道: 生きのびる神々』(東洋経済新報社)

  • 2024/04/22
教養としての神道: 生きのびる神々 / 島薗 進
教養としての神道: 生きのびる神々
  • 著者:島薗 進
  • 出版社:東洋経済新報社
  • 装丁:単行本(360ページ)
  • 発売日:2022-05-13
  • ISBN-10:4492224033
  • ISBN-13:978-4492224038
内容紹介:
神道1300年の歴史は日本人の必須教養。「神道」研究の第一人者がその起源から解き明かす。ビジネスエリート必読書。明治以降の近代化で、「国家総動員」の精神的装置となった「神道」。近年… もっと読む
神道1300年の歴史は日本人の必須教養。「神道」研究の第一人者がその起源から解き明かす。ビジネスエリート必読書。

明治以降の近代化で、「国家総動員」の精神的装置となった「神道」。近年、「右傾化」とも言われる流れの中で、「日本会議」に象徴されるような「国家」の装置として「神道」を取り戻そうとする勢力も生まれている。
では、そもそも神道とは何か。
神道は古来より天皇とともにあった。神道は古代におけるその成り立ちより「宗教性」と「国家」を伴い、中心に「天皇」の存在を考えずには語れない。
しかし「神道」および日本の宗教は、その誕生以降「神仏習合」の長い歴史も持っている。いわば土着的なもの、アニミズム的なものに拡張していった。そのうえで神祇信仰が有力だった中世から、近世になると神道が自立していく傾向が目立ち、明治維新期、ついに神道はそのあり方を大きく変えていく。「国家神道」が古代律令制以来、社会にふたたび登場する。神聖天皇崇敬のシステムを社会に埋め込み、戦争へ向かっていく。
近代日本社会の精神文化形成に「神道」がいかに関わったか、現代に連なるテーマをその源流から仔細に論じる。同時に、「国家」と直接結びついた明治以降の「神道」は「異形の形態」であったことを、宗教学の権威で、神道研究の第一人者が明らかにする。
本書はとてもバランスがよい。目配りも周到だ。神道をまず理解するのに、持って来いの一冊である。

著者は宗教学の島薗進氏。国家神道の著書も多い。東京自由大学での講義を元に、柔らかな語り口だ。

神道は、キリスト教や仏教と比べても摑みどころがない。起源が古いうえ、仏教と習合し、そのときどきの政府の政策に影響されてきた。

天津(あまつ)神/国津(くにつ)神の対比がまず重要だ。前者はアマテラスなど朝廷の神々。後者は出雲系など土着の神々。それをアマテラス中心に整理したのが古事記・日本書紀だ。その流れで伊勢神宮も造った。律令制は神祇官(じんぎかん)を置いた。天皇を祭祀者とする日本独特の制度だ。本地垂迹(ほんじすいじゃく)説は、神々をインドの仏菩薩の化身だとした。神々の格が高まることになった。

おかげ参りや富士講は、庶民が信仰の主導権を取り戻す動きだった。垂加(すいか)神道や国学や水戸学は神聖天皇を中心とする皇国主義の源流で、尊皇攘夷に結びついた。皇室祭祀や軍人勅諭や教育勅語や靖国神社は、維新政府が急ごしらえしたものだ。

みなが神道と思っているものは、神道の実態からこうも離れている。それを思い知るだけでも収穫だ。
教養としての神道: 生きのびる神々 / 島薗 進
教養としての神道: 生きのびる神々
  • 著者:島薗 進
  • 出版社:東洋経済新報社
  • 装丁:単行本(360ページ)
  • 発売日:2022-05-13
  • ISBN-10:4492224033
  • ISBN-13:978-4492224038
内容紹介:
神道1300年の歴史は日本人の必須教養。「神道」研究の第一人者がその起源から解き明かす。ビジネスエリート必読書。明治以降の近代化で、「国家総動員」の精神的装置となった「神道」。近年… もっと読む
神道1300年の歴史は日本人の必須教養。「神道」研究の第一人者がその起源から解き明かす。ビジネスエリート必読書。

明治以降の近代化で、「国家総動員」の精神的装置となった「神道」。近年、「右傾化」とも言われる流れの中で、「日本会議」に象徴されるような「国家」の装置として「神道」を取り戻そうとする勢力も生まれている。
では、そもそも神道とは何か。
神道は古来より天皇とともにあった。神道は古代におけるその成り立ちより「宗教性」と「国家」を伴い、中心に「天皇」の存在を考えずには語れない。
しかし「神道」および日本の宗教は、その誕生以降「神仏習合」の長い歴史も持っている。いわば土着的なもの、アニミズム的なものに拡張していった。そのうえで神祇信仰が有力だった中世から、近世になると神道が自立していく傾向が目立ち、明治維新期、ついに神道はそのあり方を大きく変えていく。「国家神道」が古代律令制以来、社会にふたたび登場する。神聖天皇崇敬のシステムを社会に埋め込み、戦争へ向かっていく。
近代日本社会の精神文化形成に「神道」がいかに関わったか、現代に連なるテーマをその源流から仔細に論じる。同時に、「国家」と直接結びついた明治以降の「神道」は「異形の形態」であったことを、宗教学の権威で、神道研究の第一人者が明らかにする。

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2022年7月9日

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