本書はとてもバランスがよい。目配りも周到だ。神道をまず理解するのに、持って来いの一冊である。
著者は宗教学の島薗進氏。国家神道の著書も多い。東京自由大学での講義を元に、柔らかな語り口だ。
神道は、キリスト教や仏教と比べても摑みどころがない。起源が古いうえ、仏教と習合し、そのときどきの政府の政策に影響されてきた。
天津(あまつ)神/国津(くにつ)神の対比がまず重要だ。前者はアマテラスなど朝廷の神々。後者は出雲系など土着の神々。それをアマテラス中心に整理したのが古事記・日本書紀だ。その流れで伊勢神宮も造った。律令制は神祇官(じんぎかん)を置いた。天皇を祭祀者とする日本独特の制度だ。本地垂迹(ほんじすいじゃく)説は、神々をインドの仏菩薩の化身だとした。神々の格が高まることになった。
おかげ参りや富士講は、庶民が信仰の主導権を取り戻す動きだった。垂加(すいか)神道や国学や水戸学は神聖天皇を中心とする皇国主義の源流で、尊皇攘夷に結びついた。皇室祭祀や軍人勅諭や教育勅語や靖国神社は、維新政府が急ごしらえしたものだ。
みなが神道と思っているものは、神道の実態からこうも離れている。それを思い知るだけでも収穫だ。