書評

『日本商人の源流』(筑摩書房)

  • 2024/04/29
日本商人の源流 / 佐々木 銀弥
日本商人の源流
  • 著者:佐々木 銀弥
  • 出版社:筑摩書房
  • 装丁:文庫(272ページ)
  • 発売日:2022-06-13
  • ISBN-10:4480511229
  • ISBN-13:978-4480511225
内容紹介:
大阪や東京日本橋界隈の問屋、観光地の朝市、縁日、門前町の商家など、その源流をさかのぼると、多くは中世社会にまでたどり着く。そして彼らの営業形態や商売人としての思想には、中世から引… もっと読む
大阪や東京日本橋界隈の問屋、観光地の朝市、縁日、門前町の商家など、その源流をさかのぼると、多くは中世社会にまでたどり着く。そして彼らの営業形態や商売人としての思想には、中世から引き継がれたものも少なくない。いわば現代経済社会の基礎は中世の商業社会にあるといえよう。本書は長く商業史を牽引してきた著者が、中世の個々の商人像にスポットライトをあてつつ、経済全体の流れについても描いてみせた商業史入門の傑作。朝廷に仕えた供御人、大原女などの行商人、都市の定住商人、戦国の豪商等々、さまざまな商人のしたたかな営業活動が、活き活きと浮かび上がる。解説 中島圭一
日本人はどんなビジネスをしてきたのか。平安~戦国時代の商業の変遷を概観できる歴史学の良書だ。

登場するのは、行商/旅商人/都市の座商人/海の商人/…と多彩な商人たち。彼らの生き方から、中世社会のありさまが透けてみえる。

神社の特権をかさに油を売り歩く「神人」がいた。中国から宋銭が流入し貨幣経済に。荘園の年貢は銭納になり、米や塩を市場で換金した。京都へは為替で送金。商人階層が勃興した。儲(もう)かる酒屋は土倉(高利貸し)になり、政権と癒着して憎まれた。民衆は徳政(借金帳消し)を求めた。山賊や盗賊が出没し、各所の関所は銭をとる。商人は座を組んで権益と安全の確保をはかった。京都の町衆は法華一揆で団結した。戦国大名を支えたのも各地の豪商だ。

西欧と比べ、日本の商人は都市~農村(荘園)にまたがっている。商人の自治はあまり強固でない。でも貨幣経済のもと、人びとの行動は合理的になり、新たな産業が育った。武士は都市を基盤に実力を蓄え、貴族や権門社寺は没落し、農村共同体は強くなった。日本の近代と資本主義を用意した基礎は中世にある。自分の足元を見つめる古典の復刊だ。
日本商人の源流 / 佐々木 銀弥
日本商人の源流
  • 著者:佐々木 銀弥
  • 出版社:筑摩書房
  • 装丁:文庫(272ページ)
  • 発売日:2022-06-13
  • ISBN-10:4480511229
  • ISBN-13:978-4480511225
内容紹介:
大阪や東京日本橋界隈の問屋、観光地の朝市、縁日、門前町の商家など、その源流をさかのぼると、多くは中世社会にまでたどり着く。そして彼らの営業形態や商売人としての思想には、中世から引… もっと読む
大阪や東京日本橋界隈の問屋、観光地の朝市、縁日、門前町の商家など、その源流をさかのぼると、多くは中世社会にまでたどり着く。そして彼らの営業形態や商売人としての思想には、中世から引き継がれたものも少なくない。いわば現代経済社会の基礎は中世の商業社会にあるといえよう。本書は長く商業史を牽引してきた著者が、中世の個々の商人像にスポットライトをあてつつ、経済全体の流れについても描いてみせた商業史入門の傑作。朝廷に仕えた供御人、大原女などの行商人、都市の定住商人、戦国の豪商等々、さまざまな商人のしたたかな営業活動が、活き活きと浮かび上がる。解説 中島圭一

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2022年9月17日

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