書評

『ハーレム・シャッフル』(早川書房)

  • 2024/05/31
ハーレム・シャッフル / コルソン・ホワイトヘッド
ハーレム・シャッフル
  • 著者:コルソン・ホワイトヘッド
  • 翻訳:藤井 光
  • 出版社:早川書房
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(416ページ)
  • 発売日:2023-11-21
  • ISBN-10:4152102861
  • ISBN-13:978-4152102867
内容紹介:
まっとうな人生を求めて、ハーレム地区で誠実に働くカーニー。だが生活のため、従弟がもちこむ盗品を売ることもあった。ある日、従弟の起こした事件で、カーニーは裏社会の争いに巻き込まれる。表と裏の二重生活の末に彼が選んだのは? 『地下鉄道』著者新作
『地下鉄道』が話題になった著者。2016年発表の同作では、南部から北部へ逃れる黒人奴隷を描いたが、本作の舞台は1960年前後のニューヨーク市ハーレム。アフリカ系男性のカーニーを主人公にした痛快な犯罪小説である。

カーニーは100%の善人というわけではないが、大悪党というわけでもない。家具店を営む裏で、こっそり盗品の売買にかかわっている。それでも心では、妻と幼い子供のために、より善(よ)く平穏に生きたいと願っている。

そんなカーニーをじゃまするのが従弟(いとこ)のフレディ。ギャングからも追われるようなヤバい仕事に手を染めて、カーニーに助けを求めてくる。理性では断りたいのに、情がそれを許さない。義理と人情の板挟み。なんだか日本のヤクザ映画みたい。不本意ながら犯罪に引き込まれていく、その「ずるずる」感がたまらない。

背景として描き込まれているのは、人種差別と公民権運動の高まり。アフリカ系少年が白人警官に射殺され、ハーレムの街は抗議活動や警官隊との衝突で騒然とする。カーニーが嫌った親戚としての情は、差別社会を生き延びるための道具でもある。
ハーレム・シャッフル / コルソン・ホワイトヘッド
ハーレム・シャッフル
  • 著者:コルソン・ホワイトヘッド
  • 翻訳:藤井 光
  • 出版社:早川書房
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(416ページ)
  • 発売日:2023-11-21
  • ISBN-10:4152102861
  • ISBN-13:978-4152102867
内容紹介:
まっとうな人生を求めて、ハーレム地区で誠実に働くカーニー。だが生活のため、従弟がもちこむ盗品を売ることもあった。ある日、従弟の起こした事件で、カーニーは裏社会の争いに巻き込まれる。表と裏の二重生活の末に彼が選んだのは? 『地下鉄道』著者新作

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2024年1月20日

毎日新聞のニュース・情報サイト。事件や話題、経済や政治のニュース、スポーツや芸能、映画などのエンターテインメントの最新ニュースを掲載しています。

  • 週に1度お届けする書評ダイジェスト!
  • 「新しい書評のあり方」を探すALL REVIEWSのファンクラブ
関連記事
永江 朗の書評/解説/選評
ページトップへ