書評
『西への出口』(新潮社)
パキスタン出身の英語作家による、一種の難民小説である。この十年あまり、英語圏では、近未来ディストピア、歴史改変小説、終末世界ものなどが、ときにSFの要素をとりこみながら数々生まれてきた。ミニマリズム文学の時代から、米国が9・11を経験し、さらに英・米の社会分断が明らかになった二〇一〇年代には、その傾向が強まった。一〇年代の“英文学”は再び政治の季節を迎えたと言えるだろう。国や言語などを越境する作家の活躍も、“英文学”の視界を広げることに貢献している。本作は、こうした時代に現れるべくして現れた注目作である。
舞台は中東の名前のないある国。地名が特定されないことで、中東全域、ひいては世界のあらゆる場所を想定して読める。広告代理店勤務の男性と保険会社勤務の女性が出会って惹かれあうが、とうとう内戦が勃発し街は荒廃。離れた場所へ一瞬で移動できる謎の扉があるらしいという噂が流れる。男女はそれを使って異境へと脱出するが……。難民を描きながら従来の難民小説の定石をことごとく覆す革新的な小説である。
舞台は中東の名前のないある国。地名が特定されないことで、中東全域、ひいては世界のあらゆる場所を想定して読める。広告代理店勤務の男性と保険会社勤務の女性が出会って惹かれあうが、とうとう内戦が勃発し街は荒廃。離れた場所へ一瞬で移動できる謎の扉があるらしいという噂が流れる。男女はそれを使って異境へと脱出するが……。難民を描きながら従来の難民小説の定石をことごとく覆す革新的な小説である。
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