書評

『日本の七十二候を楽しむ ―旧暦のある暮らし―』(東邦出版)

  • 2017/11/06
日本の七十二候を楽しむ ―旧暦のある暮らし― / 白井 明大
日本の七十二候を楽しむ ―旧暦のある暮らし―
  • 著者:白井 明大
  • 出版社:東邦出版
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(216ページ)
  • 発売日:2012-02-10
  • ISBN-10:4809410110
  • ISBN-13:978-4809410116
内容紹介:
日本には二十四の節気と七十二もの季節があることを知っていますか?木の芽起こし、初がつお、土用のうなぎ、秋の七草、羽子板市、晦日正月…。めぐりくる季節や自然を楽しむ、暮らしの歳時記。

旧暦の季節感は不思議な味わい

冲方丁の歴史小説『天地明察』が映画化され、絶賛上映中……だからか知らないけれど、『日本の七十二候(しちじゅうにこう)を楽しむ』が売れ続けている。旧暦の季節感を味わおう、という本である。文章を書いている白井明大は詩人で、イラストレーターの有賀一広が絵を担当。

初版が出たのが3月で、私が買ったのは9月に出た第7版第2刷。ロングセラーだ。この本に『天地明察』は出てこないけど、江戸時代に「本朝七十二候」をつくったのは渋川春海。『天地明察』と無関係ではない。

七十二候というのは、中国から伝わった季節の分けかただ。1年を24に分けるのが二十四節気で、七十二候はさらに細かい。

二十四節気は「秋分」や「立冬」や「冬至」などよく知られているが、七十二候の名称はちょっと不思議だ。たとえば二十四節気の「寒露」は10月8日ごろから10月22日ごろまで。七十二候はこれをさらに三分し、順に「鴻雁来(がんきた)る」「菊花開く」「蟋蟀(きりぎりす)戸に在り」という。著者は「季節それぞれのできごとを、そのまま名前にしているのです」と書いている。

日常会話ではどう使うのだろう。「涼しくなりましたね。ようやく寒露ですものね」などとはいうけれども、「蟋蟀戸に在りですなあ」なんていったら「お宅ではキリギリスを飼っているんですか」と聞き返されるだろう。「蟋蟀戸に在り」は10月18~22日ごろ。

これまで旧暦についての本はたくさんあったが、本書はいろんな角度から季節を楽しもうとしている。季節そのものだけでなく、季節に因んだことばや、旬の魚介・野菜・果物、行事などについてもイラストつきで解説する。「鴻雁来る」の項であれば、「菊と御九日(おくんち)」と題して長崎くんちの話があり、旬の魚介はししゃも、旬の野菜はしめじ、旬の草花はななかまど、といった具合だ。スーパーマーケットから季節感がなくなったいま、せめてこの本を眺めてしみじみとしたい。
日本の七十二候を楽しむ ―旧暦のある暮らし― / 白井 明大
日本の七十二候を楽しむ ―旧暦のある暮らし―
  • 著者:白井 明大
  • 出版社:東邦出版
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(216ページ)
  • 発売日:2012-02-10
  • ISBN-10:4809410110
  • ISBN-13:978-4809410116
内容紹介:
日本には二十四の節気と七十二もの季節があることを知っていますか?木の芽起こし、初がつお、土用のうなぎ、秋の七草、羽子板市、晦日正月…。めぐりくる季節や自然を楽しむ、暮らしの歳時記。

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初出メディア

週刊朝日

週刊朝日 2012年10月26日

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