書評

『方舟を燃やす』(新潮社)

  • 2024/06/19
方舟を燃やす / 角田 光代
方舟を燃やす
  • 著者:角田 光代
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:単行本(432ページ)
  • 発売日:2024-02-29
  • ISBN-10:410434608X
  • ISBN-13:978-4104346080
内容紹介:
オカルト、宗教、デマ、フェイクニュース、SNS。あなたは何を信じていますか? 口さけ女はいなかった。恐怖の大王は来なかった。噂はぜんぶデマだった。一方で大災害が町を破壊し、疫病が流行… もっと読む
オカルト、宗教、デマ、フェイクニュース、SNS。あなたは何を信じていますか?
口さけ女はいなかった。恐怖の大王は来なかった。噂はぜんぶデマだった。一方で大災害が町を破壊し、疫病が流行し、今も戦争が起き続けている。何でもいいから何かを信じないと、何が起きるかわからない今日をやり過ごすことが出来ないよ――。飛馬と不三子、縁もゆかりもなかった二人の昭和平成コロナ禍を描き、「信じる」ことの意味を問いかける傑作長篇。
文学の源流にうわさがある。ひとは「つてこと(流言)」に振りまわされる。

一九七〇年代に大流行した「ノストラダムスの大予言」や「口裂け女」の都市伝説。コンピューターが誤作動するという二〇〇〇年問題、災害時に現れる差別的なデマ。米国には影の政府が存在するという陰謀論が根強くある。飛語は今、ネットで文字通り飛び散っていく。

本作は、公私の「つてこと」の数々をたどりつつ、人間の生の拠りどころとは何かを考えさせる。

主人公の一人飛馬(ひうま)は、祖父は大地震を予知して村を救った英雄だと父に聞かされて育つ。母が入院すると、そこでも彼はある傍聞(かたえぎ)きによって人生を左右される。

不三子(ふみこ)は妊娠中に教会経由である料理法に出会って傾倒し、ワクチンも拒否するが、そのことで家族と距離ができてしまう。

カルト教団に入る者、フェイクニュースを信じる者。しかし真偽の境は明確ではない。飛馬の父の教えが史実と反していても、それが彼のささやかな信念であるなら、誰に否定できるだろう。一つの真実、一つの正義などあり得ないのだ。
方舟を燃やす / 角田 光代
方舟を燃やす
  • 著者:角田 光代
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:単行本(432ページ)
  • 発売日:2024-02-29
  • ISBN-10:410434608X
  • ISBN-13:978-4104346080
内容紹介:
オカルト、宗教、デマ、フェイクニュース、SNS。あなたは何を信じていますか? 口さけ女はいなかった。恐怖の大王は来なかった。噂はぜんぶデマだった。一方で大災害が町を破壊し、疫病が流行… もっと読む
オカルト、宗教、デマ、フェイクニュース、SNS。あなたは何を信じていますか?
口さけ女はいなかった。恐怖の大王は来なかった。噂はぜんぶデマだった。一方で大災害が町を破壊し、疫病が流行し、今も戦争が起き続けている。何でもいいから何かを信じないと、何が起きるかわからない今日をやり過ごすことが出来ないよ――。飛馬と不三子、縁もゆかりもなかった二人の昭和平成コロナ禍を描き、「信じる」ことの意味を問いかける傑作長篇。

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2024年4月20日

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