トルクノフらロシアの学者が、朝鮮半島の最新の情勢を展望した。南北の政権の内情を鋭く分析、ワシントン、北京、モスクワ…と複雑に絡み合う力学を解明してみせた。
アメリカ、韓国、日本、中国でないロシアの学者のアプローチが新鮮だ。≪旧ソ連共産党文書公開≫に基づく独自の視点が光る。願望を交えがちな西側の見方を補正できる。
本書は北朝鮮の核開発を、金王朝三代の一貫した政策だとみる。金日成はキューバ危機をソ連の裏切りだとし、ソ連の核の傘でなく自前の核に舵を切った。金正日はポスト冷戦の荒海を核開発で乗り切ることに賭けた。金正恩は核開発を完成させ、米中ロの干渉をはねのけ自力で体制を維持できる力量をえた。アメリカは北朝鮮がすぐ崩壊すると楽観し、漫然と過ごして時機を失した。
トランプと金正恩の会談はなぜ失敗したか。北朝鮮は体制の保障をまずえようとした。アメリカはまず核を放棄させようとした。金正恩は怒って核開発に邁進した。元から孤立しているので制裁は効果なし。日本政府も本書をよく勉強するといい。