書評

『現代コリア、乱気流下の変容: 2008-2023』(作品社)

  • 2024/08/19
現代コリア、乱気流下の変容: 2008-2023 / A・V・トルクノフ,G・D・トロラヤ,I・V・ディヤチコフ
現代コリア、乱気流下の変容: 2008-2023
  • 著者:A・V・トルクノフ,G・D・トロラヤ,I・V・ディヤチコフ
  • 翻訳:江口 満
  • 編集:下斗米 伸夫 (監修, 編集)
  • 出版社:作品社
  • 装丁:単行本(352ページ)
  • 発売日:2024-04-08
  • ISBN-10:4867930296
  • ISBN-13:978-4867930298
内容紹介:
戦乱か、和平か?危ういバランスで“休戦”状態が続く朝鮮半島──大国による「操作可能な混沌」の舞台となった南北両国家を、ロシアの碩学がパラレルに分析する。核と紛争の時代を読み解く鍵がこ… もっと読む
戦乱か、和平か?
危ういバランスで“休戦”状態が続く朝鮮半島──大国による「操作可能な混沌」の舞台となった南北両国家を、ロシアの碩学がパラレルに分析する。核と紛争の時代を読み解く鍵がここに。
統一の断念と紛争凍結モデル。


永年にわたって朝鮮半島は対決的な土地であり、乱高下してきたものの、しかも安定していた。この地球的に高まる大混乱のなか、きわどいバランスが揺さぶられないことを願いたい。(……)将来において何が起きるかは見守るしかない。未来を予測することは、過去をよく知ることによって「容易となる」。このような期待を込めて読者に本書を読んでいただきたいと願っている。(「日本語版序文」より)
トルクノフらロシアの学者が、朝鮮半島の最新の情勢を展望した。南北の政権の内情を鋭く分析、ワシントン、北京、モスクワ…と複雑に絡み合う力学を解明してみせた。

アメリカ、韓国、日本、中国でないロシアの学者のアプローチが新鮮だ。≪旧ソ連共産党文書公開≫に基づく独自の視点が光る。願望を交えがちな西側の見方を補正できる。

本書は北朝鮮の核開発を、金王朝三代の一貫した政策だとみる。金日成はキューバ危機をソ連の裏切りだとし、ソ連の核の傘でなく自前の核に舵を切った。金正日はポスト冷戦の荒海を核開発で乗り切ることに賭けた。金正恩は核開発を完成させ、米中ロの干渉をはねのけ自力で体制を維持できる力量をえた。アメリカは北朝鮮がすぐ崩壊すると楽観し、漫然と過ごして時機を失した。

トランプと金正恩の会談はなぜ失敗したか。北朝鮮は体制の保障をまずえようとした。アメリカはまず核を放棄させようとした。金正恩は怒って核開発に邁進した。元から孤立しているので制裁は効果なし。日本政府も本書をよく勉強するといい。
現代コリア、乱気流下の変容: 2008-2023 / A・V・トルクノフ,G・D・トロラヤ,I・V・ディヤチコフ
現代コリア、乱気流下の変容: 2008-2023
  • 著者:A・V・トルクノフ,G・D・トロラヤ,I・V・ディヤチコフ
  • 翻訳:江口 満
  • 編集:下斗米 伸夫 (監修, 編集)
  • 出版社:作品社
  • 装丁:単行本(352ページ)
  • 発売日:2024-04-08
  • ISBN-10:4867930296
  • ISBN-13:978-4867930298
内容紹介:
戦乱か、和平か?危ういバランスで“休戦”状態が続く朝鮮半島──大国による「操作可能な混沌」の舞台となった南北両国家を、ロシアの碩学がパラレルに分析する。核と紛争の時代を読み解く鍵がこ… もっと読む
戦乱か、和平か?
危ういバランスで“休戦”状態が続く朝鮮半島──大国による「操作可能な混沌」の舞台となった南北両国家を、ロシアの碩学がパラレルに分析する。核と紛争の時代を読み解く鍵がここに。
統一の断念と紛争凍結モデル。


永年にわたって朝鮮半島は対決的な土地であり、乱高下してきたものの、しかも安定していた。この地球的に高まる大混乱のなか、きわどいバランスが揺さぶられないことを願いたい。(……)将来において何が起きるかは見守るしかない。未来を予測することは、過去をよく知ることによって「容易となる」。このような期待を込めて読者に本書を読んでいただきたいと願っている。(「日本語版序文」より)

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2024年5月4日

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