書評

『中国農村の現在-「14億分の10億」のリアル』(中央公論新社)

  • 2024/07/15
中国農村の現在-「14億分の10億」のリアル / 田原 史起
中国農村の現在-「14億分の10億」のリアル
  • 著者:田原 史起
  • 出版社:中央公論新社
  • 装丁:新書(304ページ)
  • 発売日:2024-02-21
  • ISBN-10:4121027914
  • ISBN-13:978-4121027917
内容紹介:
経済発展めざましい中国。だが、取り残された農村部では不満が蓄積しているのではないか? 出稼ぎする「農民工」は虐げられ、「留守児童」は劣悪な環境に置かれているのでは? 1990年代末から… もっと読む
経済発展めざましい中国。だが、取り残された農村部では不満が蓄積しているのではないか? 出稼ぎする「農民工」は虐げられ、「留守児童」は劣悪な環境に置かれているのでは? 1990年代末から中国各地の農村でフィールドワークを重ねてきた著者が実態に迫る。家族の発展を何より重視する精神、末端幹部たちの奮闘、裏金が飛び交う農村選挙、習近平政権が進める都市化の本当の意味――現場で農民と酒を酌み交わして初めて見えてくる実像。
上海や北京は中国のごく一部。人口の半数近くはいまも農村に住む。その見えにくい実態を描き出す。

中国は≪国家新型城鎮化規劃≫を進め、都市化率を60%に増やすとする。全国に二千もある県を都市化、県城(県の中心都市)周辺に農民を集め≪県域社会≫をつくる。不動産バブルを巡る悲喜劇も続発中だ。

著者は農村社会学者。中国各地の農村に泊まり込み、日常を観察して文字情報の裏付けを取っていく。村の幹部は大役だ。計画出産やインフラ整備に責任をもつ。長く幹部を務めボス化する場合もあった。そこで二○年ほど前、選挙を始めた。複数が立候補し落選もある。村は混乱し民主主義も根付かなかった。

選挙の導入は、党中央が村の幹部の力を殺(そ)ぐため。中間集団も代表の考えもない中国に、民主主義はそぐわない。著者の正しい考察である。買収が横行する村の選挙、大型農機で収穫を請け負うビジネス、寄宿制の私立小学校、…。聞けば奇妙だが、本書を読むと納得できる。

巻末に紹介の「小さき麦の花」、農村の今を描く秀作映画だ。主人公は移住を迫られる。公開すぐ打切りに。政府の方針と合わないのだ。
中国農村の現在-「14億分の10億」のリアル / 田原 史起
中国農村の現在-「14億分の10億」のリアル
  • 著者:田原 史起
  • 出版社:中央公論新社
  • 装丁:新書(304ページ)
  • 発売日:2024-02-21
  • ISBN-10:4121027914
  • ISBN-13:978-4121027917
内容紹介:
経済発展めざましい中国。だが、取り残された農村部では不満が蓄積しているのではないか? 出稼ぎする「農民工」は虐げられ、「留守児童」は劣悪な環境に置かれているのでは? 1990年代末から… もっと読む
経済発展めざましい中国。だが、取り残された農村部では不満が蓄積しているのではないか? 出稼ぎする「農民工」は虐げられ、「留守児童」は劣悪な環境に置かれているのでは? 1990年代末から中国各地の農村でフィールドワークを重ねてきた著者が実態に迫る。家族の発展を何より重視する精神、末端幹部たちの奮闘、裏金が飛び交う農村選挙、習近平政権が進める都市化の本当の意味――現場で農民と酒を酌み交わして初めて見えてくる実像。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2024年5月11日

毎日新聞のニュース・情報サイト。事件や話題、経済や政治のニュース、スポーツや芸能、映画などのエンターテインメントの最新ニュースを掲載しています。

  • 週に1度お届けする書評ダイジェスト!
  • 「新しい書評のあり方」を探すALL REVIEWSのファンクラブ
関連記事
橋爪 大三郎の書評/解説/選評
ページトップへ