書評
『中国農村の現在-「14億分の10億」のリアル』(中央公論新社)
上海や北京は中国のごく一部。人口の半数近くはいまも農村に住む。その見えにくい実態を描き出す。
中国は≪国家新型城鎮化規劃≫を進め、都市化率を60%に増やすとする。全国に二千もある県を都市化、県城(県の中心都市)周辺に農民を集め≪県域社会≫をつくる。不動産バブルを巡る悲喜劇も続発中だ。
著者は農村社会学者。中国各地の農村に泊まり込み、日常を観察して文字情報の裏付けを取っていく。村の幹部は大役だ。計画出産やインフラ整備に責任をもつ。長く幹部を務めボス化する場合もあった。そこで二○年ほど前、選挙を始めた。複数が立候補し落選もある。村は混乱し民主主義も根付かなかった。
選挙の導入は、党中央が村の幹部の力を殺(そ)ぐため。中間集団も代表の考えもない中国に、民主主義はそぐわない。著者の正しい考察である。買収が横行する村の選挙、大型農機で収穫を請け負うビジネス、寄宿制の私立小学校、…。聞けば奇妙だが、本書を読むと納得できる。
巻末に紹介の「小さき麦の花」、農村の今を描く秀作映画だ。主人公は移住を迫られる。公開すぐ打切りに。政府の方針と合わないのだ。
中国は≪国家新型城鎮化規劃≫を進め、都市化率を60%に増やすとする。全国に二千もある県を都市化、県城(県の中心都市)周辺に農民を集め≪県域社会≫をつくる。不動産バブルを巡る悲喜劇も続発中だ。
著者は農村社会学者。中国各地の農村に泊まり込み、日常を観察して文字情報の裏付けを取っていく。村の幹部は大役だ。計画出産やインフラ整備に責任をもつ。長く幹部を務めボス化する場合もあった。そこで二○年ほど前、選挙を始めた。複数が立候補し落選もある。村は混乱し民主主義も根付かなかった。
選挙の導入は、党中央が村の幹部の力を殺(そ)ぐため。中間集団も代表の考えもない中国に、民主主義はそぐわない。著者の正しい考察である。買収が横行する村の選挙、大型農機で収穫を請け負うビジネス、寄宿制の私立小学校、…。聞けば奇妙だが、本書を読むと納得できる。
巻末に紹介の「小さき麦の花」、農村の今を描く秀作映画だ。主人公は移住を迫られる。公開すぐ打切りに。政府の方針と合わないのだ。
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