書評

『怪物に出会った日 井上尚弥と闘うということ』(講談社)

  • 2024/08/07
怪物に出会った日 井上尚弥と闘うということ / 森合 正範
怪物に出会った日 井上尚弥と闘うということ
  • 著者:森合 正範
  • 出版社:講談社
  • 装丁:単行本(440ページ)
  • 発売日:2023-10-26
  • ISBN-10:4065337488
  • ISBN-13:978-4065337486
内容紹介:
「みんな、井上と闘うなら今しかない。来年、再来年になったらもっと化け物になる」2013年4月、井上尚弥のプロ3戦目の相手を務めた佐野友樹はそう叫んだ。それからわずか1年半、世界王座を計… もっと読む
「みんな、井上と闘うなら今しかない。来年、再来年になったらもっと化け物になる」
2013年4月、井上尚弥のプロ3戦目の相手を務めた佐野友樹はそう叫んだ。
それからわずか1年半、世界王座を計27度防衛し続けてきたアルゼンチンの英雄オマール・ナルバエスは、プロアマ通じて150戦目で初めてダウンを喫し2ラウンドで敗れた。「井上と私の間に大きな差を感じたんだよ……」。
2016年、井上戦を決意した元世界王者・河野公平の妻は「井上君だけはやめて!」と夫に懇願した。
WBSS決勝でフルラウンドの死闘の末に敗れたドネアは「次は勝てる」と言って臨んだ3年後の再戦で、2ラウンドKOされて散った。
バンタム級とスーパーバンタム級で2階級4団体統一を果たし、東京ドームでルイス・ネリ戦を倒した「モンスター」の歩みを、拳を交えたボクサーたちが自らの人生を振り返りながら語る。第34回ミズノスポーツライター賞最優秀賞に輝いたスポーツノンフィクション。

【本書の内容】
プロローグ
第一章 「怪物」前夜(佐野友樹)
第二章 日本ライトフライ級王座戦(田口良一)
第三章 世界への挑戦(アドリアン・エルナンデス)
第四章 伝説の始まり(オマール・ナルバエス)
第五章 進化し続ける怪物(黒田雅之)
第六章 一年ぶりの復帰戦(ワルリト・パレナス)
第七章 プロ十戦目、十二ラウンドの攻防(ダビド・カルモナ)
第八章 日本人同士の新旧世界王者対決(河野公平)
第九章 ラスベガス初上陸(ジェイソン・モロニー)
第十章 WBSS優勝とPFP一位(ノニト・ドネア)
第十一章 怪物が生んだもの(ナルバエス・ジュニア)
エピローグ
26戦全勝23KO。井上尚弥は恐ろしいボクサーだ。

パンチを躱してから打つのではなく躱しながら打つノニト・ドネアの神業を、楽々と披露する。記者は誰もが「そんな技が凄い」と書きたいところだが、それだと正確な表現にならない。千変万化、戦略やその場の事情で構えすら変えてしまうからだ。どう恐ろしいのか「まだ分からない」のである。

鳥山明の漫画『DRAGON BALL』なら「スカウター」の数字で強さを表示するところ、活字では手段が限られる。そこで著者は一計を案じた。対戦相手と一緒にビデオを見、井上像を言葉にしてもらおうというのだ。

インタビューしたのは敗れた選手、踏み込んではいけない領域がある。著者の細やかな気配りで、10人からヒリヒリする対応と言葉を引き出した。佐野友樹は「みんな、闘うなら今しかない。来年、再来年はもっと化け物になる」と口走り、田口良一には「『井上戦でダウンしていない男』はいい称号だな」と述懐させた。ドネアはまだ井上戦を語りたくないと口をつぐみ、同じくレジェンドのナルバエスは饒舌だ。

戦略が光る傑作である。
怪物に出会った日 井上尚弥と闘うということ / 森合 正範
怪物に出会った日 井上尚弥と闘うということ
  • 著者:森合 正範
  • 出版社:講談社
  • 装丁:単行本(440ページ)
  • 発売日:2023-10-26
  • ISBN-10:4065337488
  • ISBN-13:978-4065337486
内容紹介:
「みんな、井上と闘うなら今しかない。来年、再来年になったらもっと化け物になる」2013年4月、井上尚弥のプロ3戦目の相手を務めた佐野友樹はそう叫んだ。それからわずか1年半、世界王座を計… もっと読む
「みんな、井上と闘うなら今しかない。来年、再来年になったらもっと化け物になる」
2013年4月、井上尚弥のプロ3戦目の相手を務めた佐野友樹はそう叫んだ。
それからわずか1年半、世界王座を計27度防衛し続けてきたアルゼンチンの英雄オマール・ナルバエスは、プロアマ通じて150戦目で初めてダウンを喫し2ラウンドで敗れた。「井上と私の間に大きな差を感じたんだよ……」。
2016年、井上戦を決意した元世界王者・河野公平の妻は「井上君だけはやめて!」と夫に懇願した。
WBSS決勝でフルラウンドの死闘の末に敗れたドネアは「次は勝てる」と言って臨んだ3年後の再戦で、2ラウンドKOされて散った。
バンタム級とスーパーバンタム級で2階級4団体統一を果たし、東京ドームでルイス・ネリ戦を倒した「モンスター」の歩みを、拳を交えたボクサーたちが自らの人生を振り返りながら語る。第34回ミズノスポーツライター賞最優秀賞に輝いたスポーツノンフィクション。

【本書の内容】
プロローグ
第一章 「怪物」前夜(佐野友樹)
第二章 日本ライトフライ級王座戦(田口良一)
第三章 世界への挑戦(アドリアン・エルナンデス)
第四章 伝説の始まり(オマール・ナルバエス)
第五章 進化し続ける怪物(黒田雅之)
第六章 一年ぶりの復帰戦(ワルリト・パレナス)
第七章 プロ十戦目、十二ラウンドの攻防(ダビド・カルモナ)
第八章 日本人同士の新旧世界王者対決(河野公平)
第九章 ラスベガス初上陸(ジェイソン・モロニー)
第十章 WBSS優勝とPFP一位(ノニト・ドネア)
第十一章 怪物が生んだもの(ナルバエス・ジュニア)
エピローグ

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2024年3月30日

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