書評

『38人の沈黙する目撃者 キティ・ジェノヴィーズ事件の真相』(青土社)

  • 2017/07/06
38人の沈黙する目撃者 キティ・ジェノヴィーズ事件の真相 / A.M.ローゼンタール
38人の沈黙する目撃者 キティ・ジェノヴィーズ事件の真相
  • 著者:A.M.ローゼンタール
  • 翻訳:田畑 暁生
  • 出版社:青土社
  • 装丁:単行本(113ページ)
  • 発売日:2011-05-25
  • ISBN-10:4791766083
  • ISBN-13:978-4791766086
内容紹介:
深夜のニューヨークで若い女性がむごたらしく殺害された。38人もの近隣住民がそれを目の当たりにしたにもかかわらず、救おうとするどころか、誰も通報さえしなかった。後に心理学の「傍観者効果」説まで生んだ特異な事件の真相とは?ピュリッツァー賞記者がミステリーに迫るノンフィクションの名作、待望の邦訳。

無関心の是非を問いかけ

夜中に、近所で悲鳴が聞こえたら、あなたはどうするだろうか。すぐに警察に通報するか、それともふとんをかぶって、知らぬふりをするか。

1964年3月13日の未明、キティ・ジェノヴィーズという娘が、ニューヨークの自宅アパートの近くで、30分にわたって襲われ続け、殺害された。その間、近隣の住人はキティの悲鳴を聞いたはずだが、だれも助けに出る
どころか、警察に通報さえしなかった。沈黙した目撃者の数は38人にものぼった。

この事件は、自分に関係のないことには関わらない、いわゆるアパシー(無関心)の問題について、多くの論議を呼び起こした。著者は、沈黙した目撃者の数が少なければ許されるのか、あるいは遠くで起こった事件なら、無関心でもいいのかなどと、鋭い問いかけをする。しかし、明確な答えは出てこない。

小著ながら、東日本大震災に対する国内外の反応が、なんの脈絡もなく思い浮かんできて、惻々(そくそく)とさせられた。
38人の沈黙する目撃者 キティ・ジェノヴィーズ事件の真相 / A.M.ローゼンタール
38人の沈黙する目撃者 キティ・ジェノヴィーズ事件の真相
  • 著者:A.M.ローゼンタール
  • 翻訳:田畑 暁生
  • 出版社:青土社
  • 装丁:単行本(113ページ)
  • 発売日:2011-05-25
  • ISBN-10:4791766083
  • ISBN-13:978-4791766086
内容紹介:
深夜のニューヨークで若い女性がむごたらしく殺害された。38人もの近隣住民がそれを目の当たりにしたにもかかわらず、救おうとするどころか、誰も通報さえしなかった。後に心理学の「傍観者効果」説まで生んだ特異な事件の真相とは?ピュリッツァー賞記者がミステリーに迫るノンフィクションの名作、待望の邦訳。

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2011年7月3日

朝日新聞デジタルは朝日新聞のニュースサイトです。政治、経済、社会、国際、スポーツ、カルチャー、サイエンスなどの速報ニュースに加え、教育、医療、環境、ファッション、車などの話題や写真も。2012年にアサヒ・コムからブランド名を変更しました。

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