「(わたしは)何歳だと思う?」という質問ほど答えるのが難しいものはない。こう問う人は、自分は実年齢より若く見えるはずだという自信を持っているので、思った年齢マイナス10歳ぐらいを答えるのだが、まれにこれが地雷となる。男女関係なく若く見られたい人は多い。ぼくだって「還暦すぎには見えませんね」なんて言われると、お世辞だとわかっていてもそう悪い気はしない。
だから神崎恵『老けない美容、老ける美容』(講談社・1650円)がよく売れているのはわかる。お化粧というか、日々の手入れも含めた美容術によって、いかに老化を防ぐかという本である。著者はモデル、女優、そして美容研究家として絶大な人気だ。
美しくありたいとは誰もが思うもの。そのとき化粧が大きな力になる。古代からいろんな民族がいろんな理由で化粧をしてきた。もちろん化粧は女性だけのものではない。
この本には、髪の量感の持たせ方とか、コンシーラー(シミ隠し)の上手な使い方とかいろいろ役立つことが書かれている。写真やイラストもたくさん載っている。
エピローグに<「若い人やキレイな人から、“年をとることは怖くない”なんて言われたくない」。これが、私が「老ける」というテーマで本を書こうと決めた一言です>とある。加齢は怖くない、年齢を重ねることは美しい、という言葉の裏にある傲慢さをよく突いている。その上で著者がこの本を書こうとした気持ちもわかる。
ただ、残念な点をいくつか指摘したい。まずタイトル。これは脅迫的。まるで「この本を読まないと老けるぞ」と言わんばかり。カバーの顔写真の半分はCGによって老けて見せたもの。つまりフェイク。フェイクで「こんなに老けますよ」というのはずるい。老けて見えるメークや加齢による変化をイラストで示すのだが、これがまた恐怖をあおり立てる。ほとんどエージズム(年齢による偏見や差別)すれすれではないか。これを乗り越えた次回作に期待したい。