書評

『ルポ「命の選別」 誰が弱者を切り捨てるのか?』(文藝春秋)

  • 2024/09/12
ルポ「命の選別」 誰が弱者を切り捨てるのか? / 千葉 紀和,上東 麻子
ルポ「命の選別」 誰が弱者を切り捨てるのか?
  • 著者:千葉 紀和,上東 麻子
  • 出版社:文藝春秋
  • 装丁:単行本(328ページ)
  • 発売日:2020-11-30
  • ISBN-10:4163913041
  • ISBN-13:978-4163913049
内容紹介:
本書は毎日新聞のキャンペーン報道「優生社会を問う」をベースに、担当した2人の記者が書き下ろしたものです。旧優生保護法が改正されて四半世紀近くが過ぎましたが、障害者への社会の理解… もっと読む
本書は毎日新聞のキャンペーン報道「優生社会を問う」をベースに、
担当した2人の記者が書き下ろしたものです。

旧優生保護法が改正されて四半世紀近くが過ぎましたが、
障害者への社会の理解は深まったのでしょうか?
障害者を取り巻く環境は改善されたのでしょうか?

新型出生前診断(NIPT)が拡大するのを利用した数多のクリニックの「検査ビジネス」は急成長中で、「不安ビジネス」として社会問題化しています。
障害者施設が建設される際、いまだに周辺住民の反対運動が、最初の大きな壁となります。
そして、実の親による障害児の社会的入院、治療拒否……。

障害者入所施設・津久井やまゆり園(相模原市)での大量殺人が世間を震撼させている今日、
いまだ弱者が切り捨てられるわが国の現状を検証します。
人間は生きものという基本から出発すると、なぜこのような考え方が生まれるのかが理解できない思想に出会うことがある。その最たるものが優生思想だ。本書は、綿密な取材から日本は優生社会化しているように見えると指摘する。具体例としてまずあげられるのが妊婦の血液を用いる新型出生前診断だ。

無認定の診療施設や民間企業が、妊婦の不安を利用して事業拡大するのを見て、当初は慎重だった日本産科婦人科学会が認可の方向に動き始めてもいる。収入への期待からと思える動きだ。これには遺伝カウンセリングの問題も絡み複雑である。著者らはこれを「不安ビジネス」と呼ぶ。最近はゲノム編集など次世代の遺伝子改変も可能になっており、ビジネスは拡大しそうだ。

一方、社会は、地域住民が障害者施設の建設反対を叫び、施設で入所者殺害事件が起きるなど、障害者をその一員として受け入れる構造を作り出せていない。このような社会の先には、誰もが排除され、差別される社会が待っているという指摘は現実味があり恐ろしい。命を大切にという言葉の具体化を考える素材を本書に見つけ、考えよう。
ルポ「命の選別」 誰が弱者を切り捨てるのか? / 千葉 紀和,上東 麻子
ルポ「命の選別」 誰が弱者を切り捨てるのか?
  • 著者:千葉 紀和,上東 麻子
  • 出版社:文藝春秋
  • 装丁:単行本(328ページ)
  • 発売日:2020-11-30
  • ISBN-10:4163913041
  • ISBN-13:978-4163913049
内容紹介:
本書は毎日新聞のキャンペーン報道「優生社会を問う」をベースに、担当した2人の記者が書き下ろしたものです。旧優生保護法が改正されて四半世紀近くが過ぎましたが、障害者への社会の理解… もっと読む
本書は毎日新聞のキャンペーン報道「優生社会を問う」をベースに、
担当した2人の記者が書き下ろしたものです。

旧優生保護法が改正されて四半世紀近くが過ぎましたが、
障害者への社会の理解は深まったのでしょうか?
障害者を取り巻く環境は改善されたのでしょうか?

新型出生前診断(NIPT)が拡大するのを利用した数多のクリニックの「検査ビジネス」は急成長中で、「不安ビジネス」として社会問題化しています。
障害者施設が建設される際、いまだに周辺住民の反対運動が、最初の大きな壁となります。
そして、実の親による障害児の社会的入院、治療拒否……。

障害者入所施設・津久井やまゆり園(相模原市)での大量殺人が世間を震撼させている今日、
いまだ弱者が切り捨てられるわが国の現状を検証します。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2021年3月13日

毎日新聞のニュース・情報サイト。事件や話題、経済や政治のニュース、スポーツや芸能、映画などのエンターテインメントの最新ニュースを掲載しています。

  • 週に1度お届けする書評ダイジェスト!
  • 「新しい書評のあり方」を探すALL REVIEWSのファンクラブ
関連記事
中村 桂子の書評/解説/選評
ページトップへ