移民時代の感覚を実践
登場人物の一人、Hirukoは、留学中に自分の故国である島国が消滅、意図せずして移民になってしまう。ノルウェーのトロンハイムに住んでいたが、たまたま現地の「メルヘン・センター」の求人広告を見つけ、自分の作った言語「パンスカ」を移民の子どもたちに教えてみたいと思い立つ。え? 自分の作った言語? と読者は驚くが、彼女はこともなげにその言語が「スカンジナビアならどこの国に行っても通じる人工語」と説明し、「汎」という意味の「パン」と、「スカンジナビア」の「スカ」をくっつけた言葉だと語る。
誰もが移民になり得る時代に、小説言語でその感覚を実践する著者の、新しい傑作。