アメリカはなぜいつもイスラエルの肩を持つのか。「聖書同盟」のゆえだと著者は言う。ユダヤ国家へのキリスト教徒の片想いのことだ。
アメリカのキリスト教徒(特に福音派)は、聖書に建国物語を読み込む。するとイスラエルが自分たちと重なる。神に選ばれた民/約束の地/救世主の出現と黙示思想/イスラエル・ロビー/ホロコーストへの罪責感。これらが重層してキリスト教シオニズムになる。シオンはエルサレムの別名。ユダヤ人シオニストの何十倍ものキリスト教シオニストがアメリカ政府を後押ししている。
本書は聖書の本文をまず読み、ヨーロッパのユダヤ人迫害、アメリカ建国と聖書のつながり、福音派の台頭、カーター、レーガン以下歴代政権の中東政策の変遷、と順を追って説き進む。すんなり頭に入る。この程度の知識を踏まえない政治家や言論人が多いのはいかに危ういか。
同盟国アメリカの迷走は、キリスト教のリベラル派と福音派の対立のせい。イスラエルをめぐる政治の舞台裏もよくわかる。中東問題の基本の基本が新書で要約された好著だ。