病原体としてのウイルスが怖いわけじゃない。病院の責任者が誰ひとり、何が起こっているのかわかってないように見えるから怖いんだ。
著者は、このウイルスが米国の医療を壊したのではなく、以前から壊れていたことを暴いたのだと気づく。
ERでは前から燃えつき症候群や自殺で、医療従事者を失っていたではないか。
アルコール依存症で毎日ERと路上の間を行き来する男性や待たされて不満を言う風邪ひきの女性。
お腹と胸の痛みで運ばれ、亡くなった女性は子宮外妊娠で、子どもを望んでも叶えられずにきたと夫が語る。望みの実現が命を奪ったのだ。
人類を月に着陸させた政府が、ハリケーン被災地に水を届けられなかったのと同じく、医療現場は限界だらけだ。
米国には保険の問題もある。
複雑で、予測不能の中で死と向き合う現場は、まさにグレーであり現代の象徴だ。