書評

『ばらまき 選挙と裏金』(集英社)

  • 2024/10/20
ばらまき 選挙と裏金 / 中国新聞「決別 金権政治」取材班
ばらまき 選挙と裏金
  • 著者:中国新聞「決別 金権政治」取材班
  • 出版社:集英社
  • 装丁:文庫(464ページ)
  • 発売日:2024-08-21
  • ISBN-10:4087446859
  • ISBN-13:978-4087446852
内容紹介:
政治家夫妻が自ら現金を配って回った前代未聞の買収事件から発展し、政府・自民党の不透明なカネの問題に切り込んだ、渾身の調査報道!「事件はまだ終わっていない」自民党衆院議員が妻の参… もっと読む
政治家夫妻が自ら現金を配って回った前代未聞の買収事件から発展し、政府・自民党の不透明なカネの問題に切り込んだ、渾身の調査報道!

「事件はまだ終わっていない」
自民党衆院議員が妻の参院選出馬に際し、地元の議員らに現金を自ら配って回った前代未聞の買収事件。その額は100人で計2871万円にのぼる。なぜ、この事件は起きたのか。本当の“巨悪”は誰なのか。広島の地元紙が総力を挙げて「政治とカネ」の取材を続けるうち、買収の資金源とも目される自民党の巨額「裏金」問題へと繋がってゆき――。政権中枢の問題をあぶり出した取材とその裏側を描く、執念のノンフィクション。

目次
第1部 事件(異例ずくめの選挙;河井夫妻;「文春砲」と反転へのスクープ;総力取材;告白・辞職ドミノ;被買収者;自民党の根深い金権体質)
第2部 法廷(百日裁判;案里公判;克行公判)
第3部 真相解明へ(政権の責任;克行公判、判決へ;被買収者の責任;「被買収」裁判;反転のスクープ再び;克行が仮釈放;病巣;国会の自浄能力)
自民党の裏金問題が明らかとなり、その常習性が疑われたが、当事者たちは、知らなかった、みんなやっていたなどと幼稚な言い逃れを続け、党内でまかり通っていた悪事を隠し通そうとしている。

2019年の参議院選挙時に広島選挙区で起きた、自民党衆議院議員・河井克行が妻・案里を当選させるためにばらまいた裏金は、実に2871万円。結果的に河井夫妻は立件されたが、その原資は何か、6選を目指す自民党の現職がいるにもかかわらず、新たな候補をぶつけたのはなぜか。裏金の存在と党の意向を重ね合わせると、党の重鎮たちの顔が浮かび上がった。

選挙区で配られた自民党の機関紙『自由民主』号外には、「だから河井あんりさん」と銘打って、安倍晋三・菅義偉・二階俊博の顔写真とメッセージが並んでいた。

『ばらまき 選挙と裏金』(中国新聞「決別 金権政治」取材班著・集英社文庫・1100円)は、広島の地元新聞社が地道な取材を続けた結集である。21年に単行本として刊行された作品の文庫化だが、6章分が増補されている。

週刊誌や全国紙に地元の事件のスクープをすっぱ抜かれた悔しさを跳ね返すように、遂(つい)に「安倍晋三をはじめとする当時の安倍政権の幹部4人が主犯の克行に現金6700万円の裏金を提供したという疑惑」の証拠をつかむ。

それが、検察が押収した克行とみられる筆跡による「総理2800 すがっち500 幹事長3300 甘利100」と書かれたメモ。このメモをもとに甘利明を取材するとあっさり認めたが、うっかり口をすべらせたのか、以降は取材に応じなくなった。

取材班のひとり、荒木紀貴が「おわりに」でメディアのあり方を問うている。自分たちが取材を続けたのは、報道が沈静化して「終わった事件」のようになっても、「買収資金の出どころが解明されていなかったから」だと。そこに疑問が残るのならば、その疑問を問い続ける。毛細血管から忍び込み、逆流しながら心臓にたどり着いたような、総力取材に引き込まれる。

【単行本】
ばらまき 河井夫妻大規模買収事件 全記録 / 中国新聞「決別 金権政治」取材班
ばらまき 河井夫妻大規模買収事件 全記録
  • 著者:中国新聞「決別 金権政治」取材班
  • 出版社:集英社
  • 装丁:単行本(312ページ)
  • 発売日:2021-12-15
  • ISBN-10:408781713X
  • ISBN-13:978-4087817133
内容紹介:
政治家夫妻が自ら現金を配って回った、前代未聞の買収事件!カバーの写真は2019年7月4日、参院選の公示日。広島選挙区に立つ出陣式で聴衆に語りかける河井案里と、それを見つめる夫の克行だ… もっと読む
政治家夫妻が自ら現金を配って回った、前代未聞の買収事件!

カバーの写真は2019年7月4日、参院選の公示日。
広島選挙区に立つ出陣式で聴衆に語りかける河井案里と、それを見つめる夫の克行だ。
素知らぬ顔で明るい未来と自身への支持を訴えるが、しかしこの時すでに2人は手分けをして数多くの地方議員や後援者への買収工作を進めていた。

広島のみならず、日本中を大きな政治不信の渦に巻き込んだ「大規模買収事件」。
それはどういったものだったのか。“買収夫妻"は何者なのか。
この事件は政界に何を残したのか。そして、本当の“巨悪"は誰なのか……。
その全貌を広島の地元紙・中国新聞が総力を挙げて取材した、執念のノンフィクション!
目次
はじめに 「全面無罪を主張する元法務大臣」
第1部 事件(異例ずくめの選挙;河合夫妻;「文春砲」と反転へのスクープ;総力取材;告白・辞職ドミノ;非買収者;自民党の根深い金権体質)
第2部 法廷(百日裁判;案里公判;克行公判)
第3部 広島の怒り(民意の風;政権の責任;克行公判、判決へ)
エピローグ 「岸田総理は誰の声を聞くのか」
おわりに 「事件はまだ終わっていない」

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ばらまき 選挙と裏金 / 中国新聞「決別 金権政治」取材班
ばらまき 選挙と裏金
  • 著者:中国新聞「決別 金権政治」取材班
  • 出版社:集英社
  • 装丁:文庫(464ページ)
  • 発売日:2024-08-21
  • ISBN-10:4087446859
  • ISBN-13:978-4087446852
内容紹介:
政治家夫妻が自ら現金を配って回った前代未聞の買収事件から発展し、政府・自民党の不透明なカネの問題に切り込んだ、渾身の調査報道!「事件はまだ終わっていない」自民党衆院議員が妻の参… もっと読む
政治家夫妻が自ら現金を配って回った前代未聞の買収事件から発展し、政府・自民党の不透明なカネの問題に切り込んだ、渾身の調査報道!

「事件はまだ終わっていない」
自民党衆院議員が妻の参院選出馬に際し、地元の議員らに現金を自ら配って回った前代未聞の買収事件。その額は100人で計2871万円にのぼる。なぜ、この事件は起きたのか。本当の“巨悪”は誰なのか。広島の地元紙が総力を挙げて「政治とカネ」の取材を続けるうち、買収の資金源とも目される自民党の巨額「裏金」問題へと繋がってゆき――。政権中枢の問題をあぶり出した取材とその裏側を描く、執念のノンフィクション。

目次
第1部 事件(異例ずくめの選挙;河井夫妻;「文春砲」と反転へのスクープ;総力取材;告白・辞職ドミノ;被買収者;自民党の根深い金権体質)
第2部 法廷(百日裁判;案里公判;克行公判)
第3部 真相解明へ(政権の責任;克行公判、判決へ;被買収者の責任;「被買収」裁判;反転のスクープ再び;克行が仮釈放;病巣;国会の自浄能力)

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