書評
『小説 イタリア・ルネサンス1〈ヴェネツィア〉』(新潮社)
舞台は16世紀イタリア。かつての栄光に陰りが見えだしたヴェネツィア共和国には、西には欧州制覇を狙うスペイン帝国があり、東にはイスラムの盟主オスマン帝国があり、その両翼から挟み撃ちにされかねない命運にあった。
名門ダンドロ家の若き当主マルコは、外交官として国難を打開すべく密命をおびて、コンスタンティノープル(現イスタンブル)に赴く。そこでは共和国元首(ドージェ)の庶子アルヴィーゼが待っていた。この青年はマルコの幼友だちであり、母はギリシア女であった。だが、アルヴィーゼの瞳にはときおり暗い光が差す。トルコの宮廷に深く通じるばかりか、なにか野心が秘められていた。
さらに、マルコにはローマから来た高級遊女の恋人がおり、アルヴィーゼの愛人は共和国元首の政敵の夫人だった。国家の命運と愛の熱情の錯綜(さくそう)するなかで、めくるめく時代に生きる人々が翻弄される。
史眼と解釈にものをいわせる高名な歴史エッセイストが、敢えて主人公の男女二人を創作する。その小説の腕前をたっぷり楽しめる上等な歴史物語。年末には連続刊行の全4巻が完結する。
名門ダンドロ家の若き当主マルコは、外交官として国難を打開すべく密命をおびて、コンスタンティノープル(現イスタンブル)に赴く。そこでは共和国元首(ドージェ)の庶子アルヴィーゼが待っていた。この青年はマルコの幼友だちであり、母はギリシア女であった。だが、アルヴィーゼの瞳にはときおり暗い光が差す。トルコの宮廷に深く通じるばかりか、なにか野心が秘められていた。
さらに、マルコにはローマから来た高級遊女の恋人がおり、アルヴィーゼの愛人は共和国元首の政敵の夫人だった。国家の命運と愛の熱情の錯綜(さくそう)するなかで、めくるめく時代に生きる人々が翻弄される。
史眼と解釈にものをいわせる高名な歴史エッセイストが、敢えて主人公の男女二人を創作する。その小説の腕前をたっぷり楽しめる上等な歴史物語。年末には連続刊行の全4巻が完結する。
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