書評

『ローマ史再考: なぜ「首都」コンスタンティノープルが生まれたのか』(NHK出版)

  • 2025/04/22
ローマ史再考: なぜ「首都」コンスタンティノープルが生まれたのか / 田中 創
ローマ史再考: なぜ「首都」コンスタンティノープルが生まれたのか
  • 著者:田中 創
  • 出版社:NHK出版
  • 装丁:単行本(254ページ)
  • 発売日:2020-08-27
  • ISBN-10:4140912650
  • ISBN-13:978-4140912652
内容紹介:
西欧中心のローマ史観を根底からくつがえす「ローマ史は五賢帝時代がピークで、あとは下降線」。世界史を学んだ人が抱くこんなイメージは、18世紀イギリスの歴史家エドワード・ギボンが印象的… もっと読む
西欧中心のローマ史観を根底からくつがえす
「ローマ史は五賢帝時代がピークで、あとは下降線」。世界史を学んだ人が抱くこんなイメージは、18世紀イギリスの歴史家エドワード・ギボンが印象的に描き出したもので、日本にも広く知れ渡っている。しかしそろそろこうした「西ヨーロッパ中心主義」を解体する時期ではないか――期待の俊英が、ローマが2000年続いたのは東側に機能的な首都・コンスタンティノープルを作ったからだとし、勅令や教会史に現れる「儀礼を中心とした諸都市の連合体」としてのローマ帝国像を生き生きと描き出す。コンスタンティヌス帝やユスティニアヌス帝ら「専制君主」とされる皇帝たちは、本当は何に心を砕いていたのか? 最新研究を踏まえた驚きの古代史!
ローマ帝国末期をめぐって、たんなる衰退ではなく、むしろ発展と変容の歴史と理解しながら、斜めの視点でローマ史の再考を迫ってくる。

ディオクレティアヌス帝の前代未聞の自らの退位後、数年の混乱を経て帝位に就いたコンスタンティヌスは、旧来の体制に決別すべく新都コンスタンティノープルを建設する。広大な帝国に複数の皇帝がおり、「皇帝のいる場所がローマ」であった。

だが、新都にも元老院が設置されたことは画期的であった。新しい貴族層という支配階層が生まれる種が蒔(ま)かれたからである。しかし、これでも「遷都」と呼んでいいのか躊躇(ためら)われる。というのも、元老院はローマにも相変わらずあったからである。さらに、火急の戦線があれば皇帝が移動し、軍団も官僚団も宮廷もともに移動する。皇帝がコンスタンティノープルに定住するのは4世紀末のテオドシウス帝のときからであった。そのとき初めて「首都」と呼べる華々しい儀礼の舞台が備わるのだ。

帝国末期の出来事のなかでも見過ごされがちな諸問題をとりあげており、異彩を放つ新進気鋭の意気込みが感じられ、心地よい読後感がある。
ローマ史再考: なぜ「首都」コンスタンティノープルが生まれたのか / 田中 創
ローマ史再考: なぜ「首都」コンスタンティノープルが生まれたのか
  • 著者:田中 創
  • 出版社:NHK出版
  • 装丁:単行本(254ページ)
  • 発売日:2020-08-27
  • ISBN-10:4140912650
  • ISBN-13:978-4140912652
内容紹介:
西欧中心のローマ史観を根底からくつがえす「ローマ史は五賢帝時代がピークで、あとは下降線」。世界史を学んだ人が抱くこんなイメージは、18世紀イギリスの歴史家エドワード・ギボンが印象的… もっと読む
西欧中心のローマ史観を根底からくつがえす
「ローマ史は五賢帝時代がピークで、あとは下降線」。世界史を学んだ人が抱くこんなイメージは、18世紀イギリスの歴史家エドワード・ギボンが印象的に描き出したもので、日本にも広く知れ渡っている。しかしそろそろこうした「西ヨーロッパ中心主義」を解体する時期ではないか――期待の俊英が、ローマが2000年続いたのは東側に機能的な首都・コンスタンティノープルを作ったからだとし、勅令や教会史に現れる「儀礼を中心とした諸都市の連合体」としてのローマ帝国像を生き生きと描き出す。コンスタンティヌス帝やユスティニアヌス帝ら「専制君主」とされる皇帝たちは、本当は何に心を砕いていたのか? 最新研究を踏まえた驚きの古代史!

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2020年11月28日

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