書評

怒らない 禅の作法 (河出書房新社)

  • 2017/08/13
怒らない 禅の作法 (河出文庫) / 枡野 俊明
怒らない 禅の作法 (河出文庫)
  • 著者:枡野 俊明
  • 出版社:河出書房新社
  • 装丁:文庫(206ページ)
  • 発売日:2016-04-06
  • ISBN:4309414451

※書店によっては、在庫の無い場合や取り扱いの無い場合があります。あらかじめご了承ください。
※詳しい購入方法は、各ネット書店のサイトにてご確認ください。

相手を操りたい心に注意

本書は、禅の精神に基づく「怒らない」ための本だ。著者は片づけ術にまつわるベストセラーもある禅宗の僧侶である。

確かに“怒り”というものはままならないものだ。つい先日も、腹を立てた男が市役所で火炎瓶を投げるという印象的な事件があったばかり。こうした怒りを抑えることができれば、さまざまな社会的コストも抑えられるかもしれない。

禅の教えとは「どんなマイナスもプラスに転じることができる」というものだという。怒りを抑えるとは「心ひとつ」で状況を変えるということ。それが本書の手法。具体的に伝えられるのは、「風に意識を向けてみてください」や「早起きをしてみる」といったアドバイスだ。

なんとたわいのない、と怒ってしまう人は読者失格。毒にも薬にもならないと感じる人もいるだろうが、それはそれで問題ない。宗教と自己啓発書とは、そういうものである。不要な人には不要、必要な人には必要なのだ。重要なのは、このアドバイスを必要とする人が多いという事実の方だろう。本書が売れているということは、現代が宗教と自己啓発書が必要とされる時代であることを意味する。

一方、気になってしまったのは、説法の端々に顔を覗(のぞ)かせる現代文明批判である。空模様を見ずにスマートフォンで天気を知ろうとする若者批判のエピソード、日本は経済大国になったが「心の豊かさはどうか」などのお説教……安易な文明批判が延々続くのがちょっと、なんて文句のひとつも書きたくなるところだが、ここはぐっと我慢。「相手をコントロールしたいという気持ち」が「怒りに直結します」と著者も指摘する。正論。私にしたところで、お坊さんがスクーターに乗ってる姿を見かけると、“ありがたみに欠けるよなあ”などと思ってしまいがち。どっちもどっちである。

初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2013年7月21日

朝日新聞デジタルは朝日新聞のニュースサイトです。政治、経済、社会、国際、スポーツ、カルチャー、サイエンスなどの速報ニュースに加え、教育、医療、環境、ファッション、車などの話題や写真も。2012年にアサヒ・コムからブランド名を変更しました。

怒らない 禅の作法 (河出文庫) / 枡野 俊明
怒らない 禅の作法 (河出文庫)
  • 著者:枡野 俊明
  • 出版社:河出書房新社
  • 装丁:文庫(206ページ)
  • 発売日:2016-04-06
  • ISBN:4309414451

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