書評

『警備員日記』(太田出版)

  • 2018/03/09
警備員日記 / 手塚 正己
警備員日記
  • 著者:手塚 正己
  • 出版社:太田出版
  • 装丁:単行本(286ページ)
  • 発売日:2011-12-09
  • ISBN-10:477831283X
  • ISBN-13:978-4778312831
内容紹介:
私は生活費を稼ぐため警備員になった。作家と警備員の二足のわらじを覆きながら、慣れない仕事に悪戦苦闘の日々が続く。どこか常識の欠落した警備の仲間たちに振り回され、仕事を辞めようかという矢先、私の前に「師匠」が現れた-。警備員の織りなす奇妙奇天烈な群像劇。傑作「軍艦武蔵」の著者が、実体験をもとに書き下ろした警備員小説。

観察して鮮やかに描いた人物像

著者はもともと、映像畑の人である。1992年には、日本海軍最後の戦艦〈武蔵〉の記録映画「軍艦武蔵」を制作、監督している。

同題の活字本も出したが、思ったほど売れないため、次の作品を仕上げるまでの間、警備員のパートを始める。本書は、その苦労話をまとめたもので、小説とも手記ともつかぬ、微妙な色合いを持つ。

工事現場などで、人や車の誘導をする警備員を、よく目にする。とかく見過ごしがちだが、本書を読むとその苦労がよく分かり、「ごくろうさん」と一声かけたくなる。

映像の世界で、それなりの業績を残した著者だが、虚心坦懐(きょしんたんかい)にこの仕事と取り組む姿は、いっそすがすがしいものがある。上司や同僚、後輩の人となりをよく観察し、その人物像を鮮やかに描き出す筆力は、凡手の技ではない。ことに、〈師匠〉と呼ばれる先輩の描写に、精彩がある。

著者には、映像の仕事と併せて著作の方面にも、視野を広げてもらいたい。
警備員日記 / 手塚 正己
警備員日記
  • 著者:手塚 正己
  • 出版社:太田出版
  • 装丁:単行本(286ページ)
  • 発売日:2011-12-09
  • ISBN-10:477831283X
  • ISBN-13:978-4778312831
内容紹介:
私は生活費を稼ぐため警備員になった。作家と警備員の二足のわらじを覆きながら、慣れない仕事に悪戦苦闘の日々が続く。どこか常識の欠落した警備の仲間たちに振り回され、仕事を辞めようかという矢先、私の前に「師匠」が現れた-。警備員の織りなす奇妙奇天烈な群像劇。傑作「軍艦武蔵」の著者が、実体験をもとに書き下ろした警備員小説。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2012年2月5日

朝日新聞デジタルは朝日新聞のニュースサイトです。政治、経済、社会、国際、スポーツ、カルチャー、サイエンスなどの速報ニュースに加え、教育、医療、環境、ファッション、車などの話題や写真も。2012年にアサヒ・コムからブランド名を変更しました。

  • 週に1度お届けする書評ダイジェスト!
  • 「新しい書評のあり方」を探すALL REVIEWSのファンクラブ
関連記事
逢坂 剛の書評/解説/選評
ページトップへ