書評

『フランコと大日本帝国』(晶文社)

  • 2018/09/14
フランコと大日本帝国 / フロレンティーノ・ロダオ
フランコと大日本帝国
  • 著者:フロレンティーノ・ロダオ
  • 出版社:晶文社
  • 装丁:単行本(532ページ)
  • 発売日:2012-02-02
  • ISBN:4794967659
内容紹介:
1939年、内戦に勝利したフランコ政権は熱烈な日本讃美の念を表明する。しかし、その6年後、太平洋戦争の最終局面では対日宣戦布告寸前にいたる。この時期、フランコ統治下のスペインと帝国日本のあいだに、いったいなにがあったのか?スペイン政府の協力のもとに構築された日本の対アメリカ諜報網の全貌、中国大陸やフィリピンにおける日西両国の利害の錯綜など、虚々実々の国際政治の暗部を明るみにさらし、第二次世界大戦下、日本とスペインの知られざる外交交渉史を発掘する。

イメージの変遷鮮やかに

第2次大戦のヨーロッパ戦線で、日本は銃こそ手に取らなかったものの、中立国においていわゆる武器なき戦い、すなわち外交戦、情報戦を展開した。その一つが、本書の舞台となったフランコ総統治下の、スペインである。

フランコは、第2次大戦の半年前に終結したスペイン内戦で、ヒトラー・ドイツとムッソリーニ・イタリアに、多大の援助を受けた。その恩義もあり、大戦中は終始中立を保ちながら、さまざまな面で独伊に協力を惜しまなかった。そのため、独伊の同盟国たる日本に対しても、当初から好意的な態度を示していた。

本書はまず、セラーノ・スニェル外相が駐西公使須磨弥吉郎の要請に応じて、英米でのスパイ活動を組織展開するため、アルカサル・デ・ベラスコなる人物を紹介したいきさつを、詳述する。その組織が収集した情報は、〈東情報〉と名づけられて、日本へ送られた。もっとも、今ではそれらがおおむね英米の手で傍受、解読されていたこと、またほとんどが二重スパイによる無価値情報か、でっち上げによる虚偽情報だったことが、明らかにされている。

日本に好意的だったスペインも、長年その影響下にあったフィリピンで、日本軍が彼らの権益を無遠慮に侵したことから、しだいに態度を硬化させる。ことに、戦況が連合軍に傾いてからは、日本との関係を断つことによって、英米の歓心を買おうとする。本書は、その経緯に多くの筆を費やして、スペインないしフランコの抱く〈日本のイメージ〉が、どのように変化したかを、鮮やかに描き出す。

従来、戦時中の日本とスペイン(を含む欧州)の関係を、本格的に取り上げた研究書はなかっただけに、本書の価値は大きい。著者は、戦時中の日西関係を研究するため、東京大学大学院に留学して、博士号を取得した気鋭の学者である。この労作の翻訳を、心から喜びたいと思う。
フランコと大日本帝国 / フロレンティーノ・ロダオ
フランコと大日本帝国
  • 著者:フロレンティーノ・ロダオ
  • 出版社:晶文社
  • 装丁:単行本(532ページ)
  • 発売日:2012-02-02
  • ISBN:4794967659
内容紹介:
1939年、内戦に勝利したフランコ政権は熱烈な日本讃美の念を表明する。しかし、その6年後、太平洋戦争の最終局面では対日宣戦布告寸前にいたる。この時期、フランコ統治下のスペインと帝国日本のあいだに、いったいなにがあったのか?スペイン政府の協力のもとに構築された日本の対アメリカ諜報網の全貌、中国大陸やフィリピンにおける日西両国の利害の錯綜など、虚々実々の国際政治の暗部を明るみにさらし、第二次世界大戦下、日本とスペインの知られざる外交交渉史を発掘する。

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2012年4月29日

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