選評

出星前夜 (小学館文庫)

  • 2017/08/27
出星前夜 (小学館文庫) / 飯嶋 和一
出星前夜 (小学館文庫)
  • 著者:飯嶋 和一
  • 出版社:小学館
  • 装丁:文庫(714ページ)
  • 発売日:2013-02-06
  • ISBN:4094087966

※書店によっては、在庫の無い場合や取り扱いの無い場合があります。あらかじめご了承ください。
※詳しい購入方法は、各ネット書店のサイトにてご確認ください。

大佛次郎賞(第35回)

受賞作=飯嶋和一「出星前夜」/他の選考委員=池内了、川本三郎、髙樹のぶ子、山折哲雄/主催=朝日新聞社/発表=同紙二〇〇八年十二月二十二日

ここに歴史があった実感

信じがたいほど不当な年貢要求に対して蜂起した、もとキリスト教徒の庄屋衆と百姓たち。飯嶋和一氏の『出星前夜』は、この島原の乱を2人の男を軸に展開させ、さらに二つの目を使いこなして、すばらしい成果をおさめた。

領主に追従する節操のない庄屋と思われていた有家の甚右衛門は、やがて百姓たちの苦しむさまを見かねて、政治的駆け引きを駆使する。その知恵の深さとおもしろさは読者の記憶に永く残るはず。しかも甚右衛門は戦になると強いのだ。

蜂起の点火役の、寿安と呼ばれる若者は、蜂起が成功したとたん、義民だったはずの百姓たちが暴徒と化したのを見て打ちひしがれ、病者を救う道を選ぶ。苦悩の泥と悲哀の砂で固められた道を必死に歩きつづける寿安に、次第に人間存在のみごとな美しさが現れてくるのは、とても巧みな設計である。

作者の採った二つの目とは、大蜂起の全体を鳥から眺める目と、登場人物たちの心理と行動を蟻(あり)から観察する目。この二つが、いい間合いにリズムを刻んでいるので寸時も飽きることがなく、そして読後の「たしかにここに歴史があった」という実感――傑作である。

【この選評が収録されている書籍】
井上ひさし全選評 / 井上 ひさし
井上ひさし全選評
  • 著者:井上 ひさし
  • 出版社:白水社
  • 装丁:単行本(821ページ)
  • ISBN:4560080380

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出星前夜 (小学館文庫) / 飯嶋 和一
出星前夜 (小学館文庫)
  • 著者:飯嶋 和一
  • 出版社:小学館
  • 装丁:文庫(714ページ)
  • 発売日:2013-02-06
  • ISBN:4094087966

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2008年12月22日

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