書評

『レオナルド・ダ・ヴィンチの手記』(岩波書店)

  • 2017/09/01
レオナルド・ダ・ヴィンチの手記 上  / レオナルド ダ・ヴィンチ
レオナルド・ダ・ヴィンチの手記 上
  • 著者:レオナルド ダ・ヴィンチ
  • 翻訳:杉浦 明平
  • 出版社:岩波書店
  • 装丁:文庫(293ページ)
  • 発売日:1954-12-05
  • ISBN-10:4003355016
  • ISBN-13:978-4003355015
内容紹介:
レオナルド(1452‐1519)こそ「万能の天才」そのものである。彼は何よりも「モナ・リザ」「最後の晩餐」などの傑作を残した画家であり、彫刻家・建築家であり、また天文学・物理学の造詣も深かった。その天才が残した厖大なノートから、わかりやすい文章を選び2冊に編集する。(上)には『絵画論』『人生論』『文学論』を収める。
まだ、学問や芸術が専門化し、細分化していなかった頃、すべてはマニュアルの問題だった。マニュアルは徒弟制度を通じて、踏襲されたが、工房からは稀にレオナルドのような天才が現われた。天才は自分を高く売るためにパトロンとなる諸侯を求めて、都市を移動した。靴屋の倅でも、おのが才能ひとつで階級のステップアップを図ることができた。その職業的、階級的モビリティの高さが、ルネサンス期の燗熟の背景をなす。

初めに画家として、その能力を高く買われたレオナルドだが、当時もっとも実証主義的だった医学の影響も受け、解剖の成果を絵画や彫刻に生かしたし、のちには兵器の発明や運河の設計も手がけている。芸術のための芸術を目指すより、封建君主の知恵袋となることを望み、政治にも深く関与した。そのせいか、手記にはパトロンの見つけ方から、ハッタリのかまし方、人品の見極め方など処世訓も数多く残されている。また、事物の観察には詩人のセンスも垣間見ることができるし、寓話に仕立てて見せる芸も細かい。左右一対の脳味噌でよくぞここまでヴァラエティに富んだことを考え抜いたものである。

【この書評が収録されている書籍】
必読書150 / 柄谷 行人,岡崎 乾二郎,島田 雅彦,渡部 直己,浅田 彰,奥泉 光,スガ 秀実
必読書150
  • 著者:柄谷 行人,岡崎 乾二郎,島田 雅彦,渡部 直己,浅田 彰,奥泉 光,スガ 秀実
  • 出版社:太田出版
  • 装丁:単行本(221ページ)
  • 発売日:2002-04-01
  • ISBN-10:4872336569
  • ISBN-13:978-4872336566
内容紹介:
現実に立ち向かう知性回復のために本当に必要なカノン(正典)を提出し、読まなくてもいい本を抑圧する、反時代的、強制的ブックガイド。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

レオナルド・ダ・ヴィンチの手記 上  / レオナルド ダ・ヴィンチ
レオナルド・ダ・ヴィンチの手記 上
  • 著者:レオナルド ダ・ヴィンチ
  • 翻訳:杉浦 明平
  • 出版社:岩波書店
  • 装丁:文庫(293ページ)
  • 発売日:1954-12-05
  • ISBN-10:4003355016
  • ISBN-13:978-4003355015
内容紹介:
レオナルド(1452‐1519)こそ「万能の天才」そのものである。彼は何よりも「モナ・リザ」「最後の晩餐」などの傑作を残した画家であり、彫刻家・建築家であり、また天文学・物理学の造詣も深かった。その天才が残した厖大なノートから、わかりやすい文章を選び2冊に編集する。(上)には『絵画論』『人生論』『文学論』を収める。

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