前書き
『世界文学ワンダーランド』(本の雑誌社)
さあ、さっそく、本文に取りかかって、ぼくが主張する「最高のエンターテインメント」がどういうものかを確認してほしい。
また、個別な作品を知る前に、文学の全体像を俯瞰したいというかたにむけて、ボーナストラックとして「とってもよくわかる『わたしたちの文学』」をつけた。これは、文学の世界を楽しく歩くための地図だ。ぼくのフリーハンドなので、縮尺がめちゃくちゃだったり、必要のない地域は省略されていたりするが、正確な地図よりもずっと役に立つと思う。
ところで、本書で紹介している作品のなかには、すでに新刊書店では入手できなくなっているものもあるが、いまはありがたいことにインターネットで古書検索ができる。SFやミステリのマニアックな本とは異なり、目を剥くようなプレミア価格がついているようなことはないはずだ。たいていが定価より安く買えると思う。また、このところの復刊ばやりで、知る人ぞ知る名作が装いも新たに書店に並ぶ機会も増えてきた。白水uブックス、ちくま文庫、河出文庫といったあたりは要チェックだ。どうしても手に入らなければ、図書館を利用する手もある。地域の図書館であっても、文学についてはそれなりに棚を充実させるようとがんばっている。その図書館になくても、おなじ自治体の別な図書館から取りよせてもらえるし、検索のための端末もそなわっている。
余談ながら、文学書はハウツー本やビジネスものにくらべて定価が高いと思われるかもしれないが、密度を考慮すればコストパフォーマンスはずっと上だ。ブランド品を買うときに「これは一生もの」という呪文を唱える人がいるが、現実的にはバッグやアクセサリーをずっと使いつづけるということはあまりないだろう。しかし、面白い文学は本当に一生つきあえる。これからもぼくは、『百年の孤独』『はまむぎ』『エペペ』といった作品を何回も読みなおすだろう。反芻や追想などではけっしてなく、そのたびに新たな興奮が得られる。だから、文学はやめられない。
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