書評
『中国の風土と民居』(里文出版)
著者はこの二十年のあいだに二十回も中国を訪れ、奥地の農村や町々の裏通りを訪ねてはさまざまな住居をカメラにおさめた。数千枚にのぼるフィルムの中から選りすぐって作ったのが本書である。庶民がふだん住んでいる伝統的な家屋だけに、味わいが深い。ここ数年、経済発展の荒波のなかですでに消え去った民家の写真も多く収められている。
映像を中心に編集された書物だが、各地の地理環境や風習を紹介する文章も要領よく配置されている。長い歳月の間に出来上がった住宅様式は必ず風土と深い関わりがある、と著者が力説しているように、風土についての解説も詳しい。
過剰な芸術的レトリックがない点がかえって快い、目線は撮影された民家に住む人々と同じ高さにあり、まなざしの温かさが感じられる。家屋の写真は住居の建築様式によって分類されたのではなく、東北、華北、華南、西南といったように、地域ごとにまとめられている。建築史の専門資料というより、生活のなかの住居を知る上で興味深い記録である。
【この書評が収録されている書籍】
映像を中心に編集された書物だが、各地の地理環境や風習を紹介する文章も要領よく配置されている。長い歳月の間に出来上がった住宅様式は必ず風土と深い関わりがある、と著者が力説しているように、風土についての解説も詳しい。
過剰な芸術的レトリックがない点がかえって快い、目線は撮影された民家に住む人々と同じ高さにあり、まなざしの温かさが感じられる。家屋の写真は住居の建築様式によって分類されたのではなく、東北、華北、華南、西南といったように、地域ごとにまとめられている。建築史の専門資料というより、生活のなかの住居を知る上で興味深い記録である。
【この書評が収録されている書籍】